興奮収縮連関(T管・筋小胞体・トロポミオシン)

ふだんは覆われている

細いフィラメントを上から見た図です。アクチンの溝にトロポミオシンという細長い帯が寝ていて、その帯にトロポニンが 3 つ組で付いています。

四角く描いてあるのが、ミオシン頭部の結合部位です。いまはトロポミオシンの帯がその上に乗っていて、頭部は結合できません。

フィラメントも頭部も ATP もそろっているのに、筋は縮みません。縮むかどうかを決めているのは、この覆いです。

信号が細胞の奥まで入る

覆いを外すのは Ca²⁺ です。その Ca²⁺ を出させるまでの道を見ます。

上の帯が筋線維膜で、そこから細胞の中へ落ち込んでいる管が T管 です。T管 の中は細胞の外側のままで、膜が奥まで折り込まれた形になっています。

左右に描いた袋が筋小胞体で、Ca²⁺ を溜めておく蔵です。T管 に接するところだけ太くなっていて、そこに Ca²⁺ の放出チャネルがあります。

運動神経の活動電位が神経筋接合部に届くとアセチルコリンが放出され、筋線維膜が脱分極します。その電気信号が膜を左右から中央へ走り、T管 を下りて細胞の奥まで入ります。T管 の電位センサーが放出チャネルを開け、Ca²⁺ が細胞質へあふれ出します。

覆いがずれて結合部位が開く

細いフィラメントに戻ります。信号を送ると、Ca²⁺ がトロポニンに結合します。

トロポニンの形が変わり、それにつながっているトロポミオシンがアクチンの溝の奥へずれます。図では帯が下へ動きます。

帯がどくと、下にあった結合部位が現れます。ここではじめて頭部が結合でき、前の図解で見た 5 段階の輪が回りはじめます。

細胞質の Ca²⁺ 濃度は、静止時の約 0.05 µM から 10 µM へ、200 倍ほど跳ね上がります。この濃度の変化が、縮むかどうかを決めるスイッチそのものです。

力を抜くのも仕事である

信号を止めます。Ca²⁺ が小胞体へ戻り、帯が元の位置に戻って、結合部位がまた覆われます。

この戻りは、放っておいて起きるものではありません。筋小胞体の膜にある Ca²⁺ ポンプが、ATP を使って Ca²⁺ を汲み戻しています。

つまり ATP は、頭部を離すためと、Ca²⁺ を汲み戻すために使われます。どちらも「縮むため」ではなく「やめるため」の仕事です。

縮むときも緩むときも ATP が要ります。ATP が尽きた体が、力なく緩むのではなく硬くなるのは、そのためです。