サルコメアの図に戻ります。中央の太い棒から、小さな突起がいくつも出ています。これが頭部です。
頭部はミオシン分子の一部です。尾部を束ねて太いフィラメントを作ると、頭部だけが外へ突き出す形になります。
突き出た先には細いフィラメントがあります。この頭部が細いフィラメントをつかんで引くところを、次の図で 1 個だけ大きくして見ます。つかんでいる頭部と、まだつかんでいない頭部を、色の濃さで分けてあります。
頭部 1 個を大きくした図です。下の太い棒が太いフィラメント、上の波線が細いフィラメントです。
頭部は 5 つの段階を巡ります。立った頭部が細いフィラメントに結合し(結合)、倒れ込んで相手を引き(首振り)、倒れたまま固く付き(硬直)、離れ(解離)、また立ち上がる(再セット)。
倒れ込むところで、細いフィラメントが左へ約 10 nm 動きます。この動きが力の正体で、あとの 3 段階は次の 1 回に備えるためのものです。
離れて立ち上がるとき、細いフィラメントは元の位置へ戻りません。引かれた先が、次の 1 周の始まりになります。
3 番目の段階、硬直で止めてあります。頭部は倒れたままアクチンに固く結合しています。
この状態の頭部は、何も持っていません。ADP も Pi も外れたあとで、自力ではアクチンから離れられません。
離れられるのは ATP が結合したときだけです。ATP が付くとアクチンへの親和性が落ちて、頭部が離れます。つまり ATP は、縮むためではなく離れるために要るのです。
死後、ATP が作られなくなると、全身の頭部がこの段階で止まります。これが死後硬直です。筋が縮んで固くなるのではなく、離れられなくなって固まるのです。
もう一度回します。今度は速さを上げてあります。
1 周で 10 nm。それだけでは何も動きませんが、1 本のサルコメアには頭部が数百組あり、全部が同じ細いフィラメントを引いています。
頭部はばらばらのタイミングで回っています。ある頭部が離れているあいだ、別の頭部はつかんでいます。だからフィラメントは一度も手放されず、引かれ続けます。
図の左右にうっすら描いてある頭部が、その仲間です。そろって動かないからこそ、筋はなめらかに縮みます。