閾値と全か無かの法則(刺激の強さと興奮の大きさ)

弱い刺激では何も起きない

ニューロンを弱く刺激すると、膜電位は少しだけ上がって、そのまま静止電位へ戻ります。興奮は起きません。

このとき膜で起きているのは、電位がわずかに動いただけのことです。刺激をやめれば、K⁺ の通り道から出ていく分がすぐに元の電位へ引き戻します。

弱い刺激をいくら丁寧に与えても、それだけでは軸索へ何も出ていきません。

越えた瞬間に興奮が起きる

刺激を強くしていくと、あるところで膜電位が一気に立ち上がります。その境目の電位を閾値といいます。

閾値を越えると Na⁺ のチャネルが開きます。開いて Na⁺ が入ると電位がさらに上がり、上がるとまた別のチャネルが開きます。いったん始まると自分で加速していくので、途中で止まりません。

閾値の手前と向こうで、起きることがまったく変わります。少しずつ大きくなるのではなく、何も起きないか、全部起きるかのどちらかです。

強くしても大きくならない

閾値を越えたあと、刺激をもっと強くしたらどうなるでしょうか。活動電位は大きくなりません。図の 2 本の山は、刺激の強さが違っても同じ高さです。

山の高さを決めているのは刺激ではなく、膜の内と外のイオンの偏りです。その偏りは刺激では変わらないので、どれだけ強く刺激しても同じ大きさの興奮しか出ません。

これを全か無かの法則といいます。1 本の神経繊維は、興奮するかしないかの 2 つしか答えを持っていません。

それでも強さは伝わる

では、強くつねられたことと軽く触られたことを、どうやって区別しているのでしょうか。

1 つは回数です。強い刺激ほど、1 秒あたりに起きる興奮の数が増えます。大きさで表せないぶんを、間隔の詰まり方で表しています。

もう 1 つは本数です。強い刺激ほど、興奮する神経繊維の数が増えます。閾値は繊維ごとに少しずつ違うので、強くすると閾値の高い繊維まで届くようになります。