ベンゼンは炭素 6 個が輪になった分子です。二重結合を持つように書きますが、アルケンのようにはふるまいません。
アルケンなら臭素水を加えると付加が起きて色が消えます。ベンゼンでは色が消えません。付加が起きないからです。
そのかわり、環に付いている水素 1 個が別のものと入れ替わる反応が起きます。これが置換で、ベンゼンの反応はほとんどこれです。
濃硝酸と濃硫酸を混ぜたものを、60 ℃ ほどでベンゼンに作用させます。
環の水素 1 個が外れ、そこにニトロ基が入ります。できるのがニトロベンゼンで、うすい黄色の油状の液体です。
環そのものは変わりません。変わったのは、6 個あった水素のうち 1 個だけです。
この先、ニトロベンゼンをスズと塩酸で還元するとアニリンになります。ニトロ化はアニリンへの道の 1 段目です。
ベンゼンに濃硫酸を加えて加熱すると、環の水素 1 個がスルホ基と入れ替わります。できるのがベンゼンスルホン酸です。
起きていることはニトロ化とまったく同じ形で、入るものが違うだけです。
ベンゼンスルホン酸は硫酸に並ぶ強い酸です。芳香族でこれより強い酸は出てきません。
この先、水酸化ナトリウムと融解してフェノールへ進みます。スルホン化はフェノールへの道の 1 段目です。
ニッケルを触媒にして高温高圧の水素を当てると、ベンゼンにも付加が起きます。水素 3 分子が入ってシクロヘキサンになります。
ここまでしないと起きない、というところが大事です。付加には環の安定した状態をこわす力が要ります。置換なら水素 1 個を入れ替えるだけなので、環はそのまま残ります。
系統図でベンゼンから 3 本の矢印が出ているうち、上と下の 2 本が置換、まっすぐの 1 本が付加です。芳香族の話がほとんど置換で進むのは、この差のためです。