濃硫酸には強く水を引きつける性質があります。エタノールに加えて熱すると、エタノールから水が取り去られます。
取り去られる水の H と O が、エタノールのどこから出てくるのか。そこで行き先が 2 通りに分かれます。
分かれ目は温度です。試薬も濃度も変えません。
高いほうの温度では、1 個のエタノール分子の中で水ができます。ヒドロキシ基がまるごと外れ、隣の炭素から水素が 1 個外れて、その 2 つが組んで水になります。
水素と酸素が抜けたあとの 2 つの炭素は、手が 1 本ずつ余ります。その手どうしがつながって二重結合になり、エチレンができます。
1 分子の中で起きるので、これを分子内脱水といいます。できるのがアルケンなので、臭素水を加えると色が消えます。
低いほうの温度では、エタノールが 2 個並んだところで水ができます。片方からヒドロキシ基がまるごと、もう片方から水素が 1 個外れて組み、水になります。
残った 2 つのかけらが酸素をはさんでつながります。これがエーテル結合で、できたものがジエチルエーテルです。
2 分子のあいだで起きるので、これを分子間脱水といいます。2 個から水が 1 個しか取れないところが、分子内脱水との違いです。
同じエタノール、同じ濃硫酸で、160〜170 ℃ ならエチレン、130〜140 ℃ ならジエチルエーテル。違いは温度だけです。
高い温度のほうが、分子 1 個の中の結合を切るのに要る力が出ます。低い温度では、2 個が並んでゆるくつながるほうが起きやすくなります。
系統図でエタノールから左へ 2 本の矢印が出ているのは、この 2 通りです。どちらの矢印にも温度が書いてあるのは、それが行き先を決めているからです。