フェノールはベンゼン環にヒドロキシ基が直接付いた化合物です。エタノールと同じヒドロキシ基を持っていますが、ふるまいが違います。
エタノールは酸として扱いません。フェノールは弱いながらも酸で、水酸化ナトリウム水溶液と中和して塩になります。
違いを作っているのは、隣にベンゼン環があるかどうかです。環が付くと、ヒドロキシ基の水素が離れやすくなります。
フェノールに炭酸水素ナトリウム水溶液を加えても、何も起きません。泡は出ず、塩にもなりません。
炭酸水素ナトリウムで塩になれるのは、炭酸より強い酸だけです。カルボン酸は炭酸より強いので泡を出し、フェノールは炭酸より弱いので何も出しません。
この 1 点が、フェノールの話のほとんどを決めています。製法も、分離の順序も、ここから出てきます。
ナトリウムフェノキシドの水溶液に二酸化炭素を吹き込むと、フェノールが遊離します。
強い酸が弱い酸を追い出す、というのが弱酸の遊離です。ここでは炭酸のほうが強い酸なので、フェノールが追い出されて出てきます。
ベンゼンスルホン酸ナトリウムを水酸化ナトリウムと融解するとナトリウムフェノキシドになり、そこへ二酸化炭素を吹き込めばフェノールになる。これが工業的でない側の製法です。
フェノールの水溶液に塩化鉄(III) の水溶液を加えると紫色になります。フェノール類を見分けるときの目印です。
必要なのは、環に直接付いたヒドロキシ基です。環から炭素 1 個ぶん離れているだけでも、この色は出ません。
臭素水を加えると、こちらは白色の沈殿が出ます。2,4,6-トリブロモフェノールで、環の水素 3 個が一度に臭素と入れ替わったものです。
フェノールを水酸化ナトリウムでナトリウムフェノキシドにし、125 ℃・5 気圧で二酸化炭素を作用させ、そのあと酸を加えるとサリチル酸ができます。
サリチル酸は環にヒドロキシ基とカルボキシ基を両方持っています。だからエステルにする相手を選べて、行き先が 2 つに分かれます。
無水酢酸を作用させるとヒドロキシ基の側がエステルになり、アセチルサリチル酸になります。解熱鎮痛剤に使われるもので、環のヒドロキシ基が残らないので塩化鉄(III) では紫色になりません。
メタノールと濃硫酸を作用させるとカルボキシ基の側がエステルになり、サリチル酸メチルになります。消炎鎮痛剤に使われるもので、ヒドロキシ基が残るので紫色になります。