カルボン酸とアルコールを混ぜて濃硫酸を加え、温めるとエステルができます。このとき水が 1 個できますが、その水がどこから出てくるかは決まっています。
カルボン酸からはヒドロキシ基がまるごと、アルコールからは水素が 1 個外れます。その 2 つが組んで水になります。逆ではありません。
残ったかけらどうしがつながったものがエステル結合です。酢酸とエタノールなら、できるのは酢酸エチルです。
濃硫酸はここでも水を引きつけるはたらきをします。できた水を取り去るので、反応が右へ進みやすくなります。
触媒としてもはたらきますが、覚えるのは脱水剤のほうです。水が減れば右へ進む、というつながりで理解できるからです。
できた酢酸エチルには果実のようなにおいがあります。エステルが香料に使われるのは、この性質のためです。
エステルに水と希硫酸を加えて温めると、水が入り込んで元のカルボン酸とアルコールに戻ります。これが加水分解です。
ただし最後までは戻りません。酸は行きの反応も戻りの反応も進めるので、どこかでつりあって止まります。
エステル化と加水分解が同じ 2 点を逆向きに結ぶ 2 本の矢印になっているのは、そのためです。
同じエステルに水酸化ナトリウムを加えて温めると、カルボン酸ではなくカルボン酸の塩ができます。これがけん化です。
塩になったものは、もうエステルには戻れません。だからけん化は途中で止まらず、最後まで進みきります。
油脂を水酸化ナトリウムでけん化するとセッケンができます。けん化という名前は、そこから来ています。
塩になると水に溶けるという一点は、このあとの分離でそのまま使います。