ホーマン遷移軌道(2 回の噴射・必要な速度変化・打ち上げの窓)

2 回の噴射だけで移る

内側の円軌道から、外側の円軌道へ移ります。燃料をいちばん使わない道は、 年にホーマンが出しました。

やることは 2 つです。まず内側を回っているところで進む向きへ噴かす。すると外側まで届く楕円に乗ります。半周かけて外側まで上がったら、そこでもう 1 度噴かして円に戻します。

あいだは何もしません。エンジンを使うのは、この 2 か所だけです。残りは重力に任せて滑っていくだけです。

どちらの噴射も、進む向きにまっすぐです。斜めに噴かすと、向きを変えるぶんが無駄になります。

遷移軌道の形は、決まりきる

途中の楕円は、内側の円に近点で接し、外側の円に遠点で接します。この条件だけで、形は 1 つに定まります。

近点距離が内側の半径 、遠点距離が外側の半径 です。半長軸はその平均で、 になります。

が決まれば周期が決まり、その半分が移るのにかかる時間です。使うのは楕円の半周ぶんだけで、残りの半分は通りません。

速さはヴィス・ヴィヴァの式から出ます。 回目は内側の円速度と楕円の近点の速さの差、 回目は楕円の遠点の速さと外側の円速度の差です。

遠くほど高くつく、とは限らない

地球の軌道から火星の軌道までなら、 回目が秒速 km、 回目が km。合わせて km です。

行き先を遠くしていくと、 回目は大きくなっていきます。ところが 回目は小さくなります。遠いところでは円速度そのものが小さいからです。

足したものは、遠くへ行くほど大きくなるわけではありません。行き先の半径が出発点の 倍のところで山になり、そこを過ぎると下がっていきます。

つまり、ある距離より遠くへ行くほうが、かえって安くつくことがあります。地球の軌道から 倍というと土星の外あたりで、火星はずっと手前です。

いつでも出発できるわけではない

着いたところに火星がいなければ、行った意味がありません。だから出発のときの 2 つの並びが決まります。

移るあいだに火星も進みます。地球から火星までは 日ほどかかり、そのあいだに火星は軌道を 度進みます。ですから出発のときには、火星が地球より 度ほど先にいなければなりません。

その並びは か月に 度しか来ません。地球と火星の周期が違うので、ずれが 周ぶん戻るのにそれだけかかります。これを打ち上げの窓といいます。

窓を逃すと 年以上待つことになります。火星へ行く探査機の打ち上げが 年おきに固まるのは、このためです。

いちばん安いが、いちばん遅い

ホーマン遷移が最も安いのは、燃料についてだけです。時間については最も高くつきます。

急ぎたければ、遠点が火星の軌道より外まで届く楕円に乗ります。火星の軌道を横切るところで到着するので、半周を待たずに済みます。そのぶん、要る速度変化は大きくなります。

人を乗せるなら、この選び方が変わります。滞在中の放射線と食料を考えると、 日を 日に縮める価値は燃料に見合います。

次の記事では、燃料をまったく使わずに速さを変える方法を見ます。惑星のそばを通るだけで、それができます。