ヴィス・ヴィヴァの式(軌道エネルギー・円速度と脱出速度・近日点と遠日点の速さ)

2 つのエネルギーは入れ替わる

惑星が持つエネルギーは 2 通りに分かれます。動いていることによるものと、太陽の近くにいることによるものです。

太陽に近づくと速くなり、動いているぶんが増えます。そのぶん、近くにいるぶんは減ります。位置のエネルギーは、無限に遠いところを と決めるので、近づくほど深い負の値になります。

増えた分と減った分は、いつも同じです。だから足した値は変わりません。軌道のどこにいても、この和は同じ 1 つの数です。

この和が、その軌道を決める数そのものになります。

その和は、半長軸だけで書ける

式にします。速さを 、太陽からの距離を とすると、 です。 が動かない値です。

その を計算すると、 になります。半長軸だけで決まっていて、離心率は入りません。細長い楕円でも円に近い楕円でも、 が同じならエネルギーは同じです。

この 2 つを合わせて について解くと、 になります。ラテン語で生きる力を意味する言葉から、ヴィス・ヴィヴァの式と呼ばれます。

いま太陽からどれだけ離れているかと、軌道の半長軸。この 2 つだけで速さが出ます。どちらを向いているかも、いつなのかも要りません。

円のとき、放物線のとき

式に特別な値を入れてみます。円なら距離はいつも半長軸に等しいので、括弧の中は になります。、これが円を保つ速さです。

放物線なら半長軸が無限に大きいので、 が消えます。、これが戻らない速さです。

2 つを比べると、後ろは前の 倍です。同じ高さで円を回っているものを飛び去らせるには、速さを 倍にすればよい、ということになります。

双曲線では が負になり、括弧の中はさらに大きくなります。式そのものは 4 つの軌道すべてで同じ形のまま使えます。

1 周するあいだの速さ

楕円を 1 周するあいだ、速さは近日点で最大、遠日点で最小になります。ケプラーの第 2 法則が言っていたことが、ここでは式として出てきます。

近日点では なので、。遠日点では分数が逆になります。

速さの比は です。離心率 の彗星なら、近日点は遠日点の 倍の速さで動いています。

同じ距離を通るときの速さは、行きも帰りも同じです。式に入るのが距離だけで、どちら向きに動いているかが入らないからです。

地球の数を入れてみる

地球の離心率は です。目で見れば円で、近日点と遠日点の区別は付きません。

それでも速さは変わります。 月の近日点で秒速 km、 月の遠日点で km。平均は km です。差は km ほど、割合にして パーセントです。

この差のせいで、北半球の冬は南半球の冬より短くなります。速く動いているあいだに通り過ぎるからで、その差はおよそ 日です。

次の記事では、時刻を与えて位置を出す計算に入ります。速さがこれで出るのに、位置のほうはそう簡単には出ません。