ここまで、太陽は止まっているものとして扱ってきました。正しくはありません。
前の記事で見たとおり、太陽が惑星を引くなら、惑星も同じ大きさで太陽を引きます。力を受ければ動きます。太陽も動いています。
動く幅は、質量の比の逆になります。太陽は木星の 倍ほど重いので、太陽が動く幅は木星の 分の ほどです。
それでも ではありません。木星が引く太陽のふらつきは、太陽の半径をわずかに超えます。
2 つの天体は、共通の重心のまわりを回ります。重心の置き場は質量の比だけで決まり、重いほうに寄ります。
地球と月では、月が地球の 分の しかありません。重心は地球の中心から km のところ、つまり地球の内側に入ります。地球は月に引かれてふらついていますが、そのふらつきは自分の中に収まっています。
冥王星とカロンでは比が 分の ほどしかないので、重心は 2 つのあいだの空いたところに出ます。互いに相手のまわりを回っている、と言うほうが近い形です。
外から力が加わらなければ、重心そのものは動きません。動いて見えるのは、そのまわりを回る 2 つのほうです。
2 つの位置を別々に追うのはやめて、そのあいだの相対位置だけを追うことにします。
すると、動かない中心のまわりを 1 つのものが回る問題になります。ただし回るものの質量は、どちらかの質量ではなく になります。これを換算質量といいます。
この置き換えのおかげで、ここまでに出した答えは全部そのまま使えます。楕円も、面積の法則も、逆二乗の力から出た形も、何ひとつ捨てなくて済みます。
片方が桁違いに重ければ、 は軽いほうの質量にほとんど等しくなります。太陽と地球ではその差が 万分の しかないので、太陽を止めて扱ってもまず困りません。
この見方が、そのまま道具になります。惑星が見えなくても、星のふらつきが見えれば、そこに惑星がいると分かります。
星が近づくときと遠ざかるときで、届く光の波長がわずかにずれます。そのずれを読めば、視線に沿った速度が出ます。速度は 1 周ごとにくり返す波になり、その周期が惑星の公転周期です。
波の山の高さは、惑星がどれだけ重いかを教えます。重い惑星ほど、星を大きくふらつかせるからです。
年、ペガスス座 番星でこの波が見つかりました。木星ほどの惑星が 日で 1 周している、という読み取りでした。太陽以外の恒星をめぐる惑星が見つかったのは、これが初めてです。
2 体の問題は、閉じた式で解けます。初めの位置と速度を与えれば、いつどこにいるかが式として書けます。
解けるのは、保存する量がそろっているからです。エネルギーが変わらず、角運動量が変わらず、さらに近点の向きを指したまま動かない量があります。
3 つ目があるおかげで軌道は閉じ、楕円の向きが決まります。前の記事で「逆二乗のときだけ閉じる」と言ったのは、この量が保存するのが逆二乗のときだけだからです。
ここまでが、天体力学のいちばん静かな部分です。3 つ目の天体を足したとたん、この静けさは終わります。それは第 4 章で扱います。