電子の二重スリット — 1 個ずつ送っても縞ができる

光の二重スリットと同じ縞ができる

細い隙間を 2 つ並べた板に光を当てると、向こうのスクリーンに明暗の縞が出ます。2 つの隙間から広がった波が重なり、山と山が合うところで明るく、山と谷が合うところで暗くなるためです。

同じ装置へ、光の代わりに電子線を送ります。すると、やはり同じ形の縞が出ます。物質波が計算上の道具ではなく、実際に干渉する波だということです。

電子は電荷を持つ粒で、1 個ずつ数えられます。その粒が、干渉という波にしかできないことをする。ここから先が、この記事の本題です。

1 個ずつ送っても縞ができる

電子を、装置の中に 1 個しかない状態まで弱めて送ります。1 個が着くたびにスクリーンの 1 点が光り、粒として着いたことが分かります。着く場所は毎回ばらばらです。

ところが、点をためていくと、そのばらばらだったはずの場所が縞の形に並びます。10 個では何も見えず、1000 個で薄く、10 万個ではっきりした縞になります。

電子どうしがぶつかって縞を作っているのではありません。装置の中にはいつも 1 個しかいないからです。1 個の電子が、自分だけで 2 つの隙間を通り抜けたことになります。

縞の間隔は波長で決まる

2 つの隙間の間隔を 、スクリーンまでの距離を とします。スクリーン上で中心から だけ離れた点まで来る 2 本の経路には、 だけの長さの差があります。

この差が波長の整数倍のとき、2 つの波は山どうしで重なって明るくなります。 ですから、明るい線の間隔は です。

測った からこの式で を出すと、 と合います。縞の細かさが、そのまま電子の波長を測る道具になっています。

波が決めているのは確率

1 個の電子がどこに着くかは決まっていません。決まっているのは、たくさん送ったときにどこへ何個着くか、その割合だけです。

その割合を決めているのが波です。波の重なった大きさを と書くと、その点に着く確率は そのものではなく、大きさの 2 乗 に比例します。明るい縞は確率の高いところ、暗い縞は確率のほとんど のところです。

2 乗を取るのは、光の明るさが振幅の 2 乗だったのと同じです。違うのは、光では 1 本の波の明るさだったものが、ここでは 1 個の粒がそこへ来る見込みになっている、というところです。

どちらを通ったか見ると縞が消える

では、電子がどちらの隙間を通ったのかを見てみます。片方の隙間に検出器を置き、通ったかどうかを調べながら同じ実験をします。

すると縞は消えます。残るのは、2 つの隙間のそれぞれの正面に 1 つずつ、合わせて 2 つの山だけです。粒として通り道を決めたとたん、波としての重なりがなくなります。

見るのをやめれば縞は戻ります。装置は何も変えていません。変えたのは、どちらを通ったかという情報が取り出せる状態にしたかどうかだけです。どちらを通ったか決まっていないあいだだけ、2 本の経路が重なることができる。これが二重スリットの言っていることです。