不確定性原理 - 位置を絞ると運動量が広がる

波長が決まっていると、場所が決まらない

波長がぴったり 1 つに決まった波は、どこまでも同じ形で続きます。始まりも終わりもないので、どこにあるかと聞かれても答えようがありません。

物質波では、波長が決まっていることと運動量が決まっていることが同じです。p = \dfrac{h}{\lambda} だからです。運動量がぴったり決まっている粒は、位置がまったく決まっていないことになります。

どこにいそうかを |\psi|^2 で読むなら、この波の |\psi|^2 はどこでも同じ高さです。どの場所も同じだけありうる、ということです。

重ねると場所が絞れる

波長の少しずつ違う波を何本も重ねると、あるところでは山どうしがそろって大きくなり、離れたところでは打ち消し合って消えます。この、ひとかたまりになった波を波束といいます。

重ねる本数を増やすほど、かたまりは細くなります。どこにいるかがよく決まる、ということです。

ところが、本数を増やすことは、含まれる波長の幅を広げることでもあります。位置を絞るほど、運動量がばらけます。これが不確定性の中身です。

狭い隙間に通して見る

電子を細い隙間に通します。隙間の幅を \Delta x とすると、通った瞬間の位置はその幅の中に決まります。

隙間を出た波は回折して広がります。広がる角度は、幅が狭いほど大きくなります。広がったということは進む向きがばらけたということで、横向きの運動量がばらけたことになります。

回折の最初の暗い線が出る角度は \sin\theta = \dfrac{\lambda}{\Delta x} です。横向きの運動量のばらつきは \Delta p が p\sin\theta = \dfrac{h}{\Delta x} ほどになり、掛け合わせると \Delta x \Delta p が h ほどになります。

積には下限がある

きちんと定義して計算すると \Delta x \Delta p \geqq \dfrac{h}{4\pi} です。片方をいくら小さくしても、もう片方が大きくなって、積はこの値より下がりません。

測り方が下手だから決まらない、という話ではありません。よい装置を作れば両方とも決められる、というものでもないのです。決まった値を両方同時には持っていない、というのが式の言っていることです。

\Delta x と \Delta p の組は、この曲線より上の側にしか置けません。境目にちょうど乗るのは、積がいちばん小さい波束です。

日常の大きさでは効かない

\dfrac{h}{4\pi} は 5.3 \times 10^{-35} という小さな数です。\Delta p = m\Delta v なので、質量が大きいほど \Delta v の下限は小さくなります。

150 g のボールの位置を 0.1 mm の精度で決めても、速さのばらつきの下限は 10^{-30} m 毎秒ほどです。測れる量ではありません。

電子で同じことをすると話が変わります。原子の大きさ 10^{-10} m に閉じこめると、速さのばらつきは 10^{6} m 毎秒ほどになります。原子の中の電子が決まった速さで回っている、とは言えない大きさです。

光の粒子性
物質の波動性
原子のエネルギー準位
シュレーディンガー方程式
角運動量と水素原子
スピンと周期表
分子と固体
量子もつれ