膨張は続いていますが、重力はそれを引き戻そうとしています。まず物質だけを考えて、この綱引きの行方を追ってみます。決めるのは、宇宙にどれだけ物が詰まっているかです。
膨張をちょうど止められる密度があります。これを臨界密度といい、実際の密度をそれで割った比を と書きます。
なら重力が勝ちます。膨張はいつか止まり、そこから縮みに転じます。 なら止まらず、いつまでも広がり続けます。
ちょうど が境目です。膨張は止まりませんが、限りなく遅くなっていきます。 本の曲線は初めのうち見分けがつかず、分かれるのはずっと後になってからです。
では、実際の はいくつでしょうか。宇宙の中身を数え上げれば出ます。
星やガスや、私たちの体を作っている原子。こうした通常の物質は、全体の % ほどしかありません。軽元素の存在比が、この量を教えてくれました。
回転曲線が要求した暗黒物質が % です。光を出さないので見えませんが、重力では確かに効いています。通常の物質の 倍以上あります。
残りの % が暗黒エネルギーです。 つを足すと 、つまり臨界密度ちょうどになります。ただし暗黒エネルギーは重力に逆らって働くので、 でも膨張は止まりません。
密度が決めるのは運命だけではありません。空間の形も決めます。一般相対論では、物があるところで空間そのものが曲がるからです。
曲がった空間では、平面の幾何が成り立ちません。いちばん分かりやすい違いが、三角形の内角の和です。
密度が臨界密度より高いと、空間は球面のように閉じた曲がり方をします。三角形の辺は外へ膨らみ、内角の和は より大きくなります。
低いと逆向きに反り、和は より小さくなります。ちょうど臨界密度なら、和は です。平らな空間です。 を測ることと、空間の曲がりを測ることは、同じことなのです。
空に三角形を描いて角を測る、というわけにはいきません。かわりに、丈の分かっている物を遠くに置き、それが何度に見えるかを測ります。
空間が閉じた曲がり方をしていれば、視線が寄っていくので、同じ物が大きく見えます。開いていれば小さく見えます。見込む角が、曲がりをそのまま映します。
その物差しになるのが、背景放射のむらです。むらの大きさは、晴れ上がりの時点で音が届いていた距離で決まっており、観測に頼らず計算で出せます。
測った角は、平らな空間の予想と合いました。 です。ただし内訳の % は暗黒エネルギーですから、平らでも膨張は止まりません。加速したまま広がり続けます。