宇宙マイクロ波背景放射 — 晴れ上がりの光と、わずかなむら

逆に回すと、詰まっていて熱い

ハッブルの法則が言っているのは、銀河どうしがいま離れつつある、ということです。では時間を逆に回してみます。離れつつあるものは、昔は近かったことになります。

間隔が縮むと、同じものが狭いところに入ります。密度が上がります。どこまでも遡れば、いくらでも詰まった状態に行き着きます。

詰まると温度も上がります。気体は押し縮めると熱くなります。光も同じで、空間が縮むぶんだけ波長が縮み、その光 1 つ 1 つのエネルギーが上がります。

温度は空間の広がりに反比例して上がります。いまの広がりを として と書くと、 です。昔へ行くほど は小さく、 は大きくなります。宇宙は熱い状態から始まりました。

電子が捕まって、光が抜ける

数千度より熱いあいだ、原子は電子を捕まえていられません。陽子と電子がばらばらに飛び回っている状態です。

自由な電子は光をよく散乱します。光はまっすぐ進めず、少し進んでは向きを変えます。この状態の宇宙は、その中にいても遠くが見通せません。

膨張して温度が K あたりまで下がると、電子が陽子に捕まって中性の水素になります。散乱する相手がいなくなります。

その時点から、光はまっすぐ進むようになりました。これを晴れ上がりといいます。いま届いている背景放射は、そのとき最後に散乱した光です。これより古いところは、どんな望遠鏡でも見通せません。

伸びて K で届く

晴れ上がったときの光は K の熱の光でした。目に見える波長を含む、明るい光です。

そのあとも空間は膨張し続けました。空間が伸びると、その中を進む光の波長も同じだけ伸びます。膨張は光を引き伸ばします。

晴れ上がりからいままでに、空間はおよそ 倍になりました。 です。波長も 倍に伸び、温度は 分の 1 に下がります。

を で割ると ほどです。実際、空のどこを向いても K の熱の光が届いています。晴れ上がりのとき目に見える光だったものが、いまはマイクロ波です。

ほぼ一様で、 だけむらがある

どの向きを測っても、この光の温度はほとんど同じです。違いは ほどしかありません。宇宙は、大きく見ればどこも同じだということです。

ただし、完全に一様ではありません。わずかに温かいところと冷たいところがあります。温度差を強調して描くと、むらの模様が現れます。

このむらは、晴れ上がりの時点での密度のむらです。濃いところは重力が強いので周りをさらに引き寄せ、薄いところはますます薄くなります。差は時間とともに広がります。

つまりこのむらが、銀河や銀河団の種です。もし完全に一様だったら、どこにも何も集まれません。 の差があったから、いまの構造があります。

宇宙論の基本