体温が下がりはじめると、視床下部がそれを受け取ります。視床下部は設定値を持っていて、いまの体温がそこから外れたことを知る場所です。
まず神経を通して筋肉へ指示が出て、筋肉が細かく震えます。これがふるえで、筋肉が動けばそのぶん熱が生まれます。
あわせて、血に乗るホルモンが代謝そのものを底上げします。こちらは効きはじめるまで時間がかかりますが、いったん効けば長く続きます。
どちらも、作る熱を増やす向きの働きです。
体温が上がりはじめたときは、逆のことをします。
神経を通して皮膚へ指示が出て、汗が出ます。汗が蒸発するときに熱を奪っていくので、体から出ていく熱が増えます。
皮膚のすぐ下の血管も広がり、血が体の表面を多く通るようになります。表面から逃げる熱が増え、体温は下がります。
どちらも、逃げる熱を増やす向きの働きです。
寒いときの働きと暑いときの働きは、まったく別のものに見えます。けれども、どちらも同じ 37 °C という設定値へ戻すためのものです。
違うのは、体温がその設定値のどちら側へ外れたかだけです。下へ外れれば熱を作る側が働き、上へ外れれば熱を逃がす側が働きます。
血糖値を上げるホルモンと下げるホルモンが両方いたのと、同じ形をしています。調節には、どちらの向きへも押し戻せることが要ります。
寒い所と暑い所を行き来しても、体温はほとんど動きません。そのあいだ、体の中では働くものが入れ替わりつづけています。
外の気温のグラフは大きく動き、体温のグラフはほとんど平らなままです。この 2 本の差が、そのまま調節が働いた量です。
恒常性が見えるのは、値そのものではなく、値が動かないために何が動いたかを見たときです。