まず、あり得ない体を考えます。値がずれた瞬間に信号が出て、その瞬間に効き目がそろい、戻った瞬間に効き目が消える体です。
この体では、値は設定値まで戻ったところで止まります。戻った瞬間に押す力が消えるので、それ以上は動きません。
グラフはなめらかに近づいて、そのまま平らになります。行き過ぎも揺れもありません。
実際の体はそうなっていません。信号は出てから運ばれ、受け取られ、働きが始まるまでに時間がかかります。
そのため、値が設定値へ戻った時点でも、少し前に出た信号がまだ効いています。押す力が残っているので、値はそこで止まらず、反対側へ通り過ぎます。
2 本を重ねてあります。遅れのない線は設定値で止まり、遅れのある線はそれを越えていきます。違いは遅れがあるかどうかだけで、ほかは何も変えていません。
反対側へ外れれば、今度は逆向きの信号が出ます。血糖値ならインスリンとグルカゴンが入れ替わり、体温ならふるえと発汗が入れ替わります。
逆向きの信号にも同じ遅れがあるので、押し返した先でもまた行き過ぎます。ただし、外れの大きさは前より小さくなっています。
行き過ぎるたびに幅が縮んでいくので、揺れは少しずつ収まっていきます。
この揺れは、調節がうまくいっていないから起きるのではありません。遅れのある調節なら、どんなに正確でも必ず起きます。
生き物の値は、設定値の上でぴたりと止まってはいません。いつも少し外れていて、いつも押し戻されています。
一定に保たれているという言葉は、その振れ幅が狭いところに収まっている、という意味です。止まっていることではありません。
シミュレーターで速さを上げると、この振れがはっきり見えます。4 つの盤面はどれも同じ形の輪なので、どこで見ても同じことが起きます。