分子結晶とは、分子間の相互作用で分子が規則正しく配置された固体の結晶のこと。相互作用には水素結合とファンデルワールス力がある。ファンデルワールス力は分子量が大きくなると大きくなるため、分子量が大きいほど融点と沸点が高くなる。
- 分子間の相互作用(ファンデルワールス力・水素結合)
- 融点と沸点は低い
- 昇華しやすい
- 電気伝導性なし
- やわらかく、もろい
分子結晶の例
- 氷
- ドライアイス
- 斜方硫黄
- ヨウ素
- ナフタレン
- p-ジクロロベンゼン
水は水分子が正四面体をなしながら巨大な結晶をつくる。
ドライアイス、ヨウ素、ナフタレン、p-ジクロロベンゼンは昇華する。斜方硫黄は昇華しにくい。
共有結晶
原子の共有結合にもとづいて規則正しく配置された、一つの巨大分子とみなされる固体の結晶。
- 共有結合
- 融点と沸点が高い
- 電気伝導性なし(黒鉛除く)
- 硬い
共有結晶の例
- ダイヤモンド(炭素)
- 黒鉛(炭素)
- ケイ素(炭素)
- 二酸化ケイ素
金属結晶
自由電子によって規則正しく結合された固体の結晶。構造は体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造の三つがある。
- 自由電子
- 展性と延性
- 電気伝導性
- 熱伝導性
アルミニウム、鉄、銅など。
イオン結晶
陽イオンと陰イオンの静電気力(クーロン力)によって結合された固体の結晶。構造は塩化セシウム型、塩化ナトリウム型、硫化亜鉛型の三つがある。
静電気力はファンデルワールス力などと比べて非常に強い力であるため、融点と沸点が極めて高くなる。
- 陽イオンと陰イオンの静電気力
- 融点と沸点が高い
- 電気伝導性なし(融解したり水に溶けたりすると電気を通す)
- 硬く、もろい
イオン結晶の例
- 塩化ナトリウム NaCl
- 塩化カルシウム CaCl2
- 硫酸カリウム K2SO4
静電気力(クーロン力)の補足
磁石のN極とS極が引き合うように、電気もプラスとマイナスは引き合う。これを静電気力(クーロン力)という。静電気力は次の性質を持つ。
- プラスとマイナスは引き合う
- プラスとプラスは反発する
- マイナスとマイナスは反発する
陽イオンはプラスの電気、陰イオンと電子はマイナスの電気を持っている。電気の単位は C で「クーロン」という(「クーロン」はフランスの物理学者クーロンにちなんでいる)。プラスの電気はプラス、マイナスの電気はマイナスの符号をつける。
例えばマイナスの電気を持つ電子の電気量は約 -1.6 × 10-19[C] である。
静電気力(クーロン力)の公式
A イオンの電気量を Q[C]、B イオンの電気量(の絶対値)を q[C]、A イオンと B イオンの距離を r[m] とするとき、A イオンと B イオンの間に働く力は
\[ F = k_{0} \frac{Qq}{r^2} \]
となる。
ただし、力の符号は引き合うときをマイナス、反発するときをプラスとする。k0 は二つのイオンによらない普遍的な定数である。
クーロンの公式によって、イオンとイオンの間に働く力はイオン間距離が長くなればなるほど弱くなり、短くなればなるほど強くなることがわかる。
また k0 が定数であることから、イオン間に働く力はイオンの物質的な性質によらず、イオンの持つ電気量だけで決まることもわかる。