バラ戦争を終結させ、王権を強化してテューダー朝を開いた。
テューダー朝は1485年から1603年まで続いたイングランドの王朝で、イングランド史上最も劇的で影響力のある時代の一つです。この王朝は薔薇戦争の終結とともに始まり、イングランドを中世から近世へと導いた重要な変革期でした。
1485
ヘンリー7世
1509
ヘンリー8世
宗教改革を進め、イングランド国教会を成立させた。
1547
エドワード6世
ヘンリー8世の子。若くして王位につき、プロテスタント改革をさらに推進した。
1553
メアリー1世
カトリック復帰を目指し、異端審問を行ったため「ブラッディ・メアリー」と呼ばれた。
1558
エリザベス1世
「処女王」として知られ、イギリスの黄金時代を築いた。スペイン無敵艦隊を撃破し、文化も大きく発展した。
テューダー朝の成立と薔薇戦争の終結
テューダー朝の成立は、30年間続いた薔薇戦争の終結と密接に関わっています。ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）は、1485年のボズワースの戦いでリチャード3世を破り、ランカスター家とヨーク家の対立に終止符を打ちました。
薔薇戦争で国土が荒廃
ヘンリー・テューダーがボズワースで勝利
ヨーク家のエリザベスと結婚
両家の統合によりテューダー朝成立
ヘンリー7世は巧妙な政治手腕により、分裂していた貴族階級を統制し、王権の強化を図りました。彼の治世は経済の安定化と中央集権体制の確立に重点が置かれ、後のテューダー朝の繁栄の基盤を築きました。
ヘンリー8世の宗教改革
テューダー朝で最も有名な君主の一人であるヘンリー8世（在位1509-1547年）は、6度の結婚と宗教改革で知られています。彼の治世における最大の変革は、ローマ・カトリック教会からの離脱でした。
1534年、ヘンリー8世は首長令を発布し、自らをイングランド国教会の首長と宣言しました。
国王が宗教的権威の頂点に立つことを法的に確立した法令。
この宗教改革は単なる離婚問題を超えて、イングランドの政治・社会構造に根本的な変化をもたらしました。修道院の解散により膨大な土地と富が王室に移譲され、新興地主階級の台頭を促進しました。
カトリック時代
教皇が宗教的権威の頂点に立ち、修道院が広大な土地を所有していた
国教会成立後
国王が宗教的権威となり、修道院財産の世俗化により新たな地主階級が誕生した
エリザベス1世の黄金時代
テューダー朝の最後の君主エリザベス1世（在位1558-1603年）の治世は、しばしば「黄金時代」と呼ばれます。彼女の45年間の統治は、文化的繁栄、海洋進出、そして国力の拡大を特徴としていました。
文化的繁栄
ウィリアム・シェイクスピア、クリストファー・マーロウなどの劇作家が活躍し、演劇や文学が大きく発展。
海洋進出
フランシス・ドレイクの世界周航、ウォルター・ローリーの新世界探検など、海外進出が本格化。
スペイン無敵艦隊の撃破
1588年、スペインの無敵艦隊を破ったことで、イングランドの海軍力が確立され、海洋国家としての地位を築く。
宗教的安定
「中道路線」により、カトリックとプロテスタントの対立を巧妙に回避し、国内の宗教的安定を実現。
テューダー朝の政治制度
テューダー朝は中央集権的な絶対王政の確立を目指しましたが、議会制度との微妙なバランスを保ちながら統治を行いました。
| 統治機関 | 枢密院（Privy Council） |
| 司法制度 | 星室庁裁判所の活用 |
| 財政政策 | 修道院財産の世俗化 |
| 外交方針 | 大陸諸国間のバランス外交 |
| 宗教政策 | 国教会の確立と維持 |
| 議会関係 | 王権強化と議会との協調 |
特に重要なのは、テューダー朝の君主たちが議会を完全に無視するのではなく、必要に応じて議会の承認を求めながら政策を推進したことです。これにより、後の立憲君主制の基盤が形成されました。
社会経済の変化
テューダー朝時代は、イングランド社会の構造的変化が加速した時期でもありました。
1485
テューダー朝成立
薔薇戦争の終結により政治的に安定。
1536-1540
修道院解散
修道院財産の世俗化により新興地主階級（ジェントリ）が台頭。
1558-1603
エリザベス朝
海外貿易の拡大、毛織物工業の発展により商業資本主義が進展。
1588
無敵艦隊撃破
海洋覇権の確立により植民地経営と海外貿易が本格化。
テューダー朝の終焉と歴史的意義
エリザベス1世が1603年に子供を残さずに死去したことで、テューダー朝は断絶しました。王位はスコットランド王ジェームズ6世（イングランド王ジェームズ1世）に継承され、ステュアート朝が始まりました。
テューダー朝118年間の統治は、イングランドを中世的な封建国家から近世的な民族国家へと変貌させました。宗教改革による精神的独立、海洋進出による経済的発展、文化的繁栄による国民意識の形成など、その影響は後の大英帝国の基礎となったのです。
テューダー朝以前
封建的分権状態で、カトリック教会の影響下にあった中世的なイングランド
テューダー朝以後
中央集権的な民族国家として、独自の宗教と文化を持つ近世的なイングランド
テューダー朝は単なる王朝交代ではなく、イングランド史における決定的な転換点であり、現代イギリスの国家的基盤を築いた重要な時代として位置づけられています。
