等温・等圧・等積・断熱の 4 過程:消える量と p-V 図での形
気体の状態を変えるとき、何を一定に保つかで話が変わります。温度、圧力、体積、熱の出入り。この 4 つが基本の分け方です。
第一法則の 3 つの量のうち、どれかが必ず消えるところが要点になる。
は気体が外へする仕事です。以下では 4 つの過程を順に見て、消える量を確かめ、- 図での形と解き方の順序まで進みます。
共通の点から 4 本の道が出る
同じ状態から出発しても、何を止めるかで進む向きが変わる。

赤は圧力を止めた道、緑は体積を止めた道です。青と紫はどちらも曲がりますが、紫のほうが速く落ちる。
その理由はあとの節で確かめます。まず 1 つずつ見ていく。
等積変化 — 仕事がゼロ
体積を止めると、ふたが動きません。押す相手がないので仕事も出ない。
第一法則から、与えた熱はすべて内部エネルギーになる。
密閉した容器を温める場面がこれにあたる。- 図では縦にまっすぐ進みます。
例:体積を止めて加熱する
単原子分子の理想気体 の温度を、体積を止めたまま 上げます。
がそのまま内部エネルギーの増加分です。仕事はゼロなので、外へは何も出ていかない。
等圧変化 — 熱が二手に分かれる
圧力を止めると、気体は膨張しながらふたを押します。仕事が出る。
状態方程式 で を止めれば、体積の増えぶんが温度の増えぶんに比例する。
この形なら体積を測らなくても仕事が出せる。温度差だけで済みます。
与えた熱は内部エネルギーと仕事に分かれます。- 図では横にまっすぐ進む。
例:圧力を止めて加熱する
さきほどと同じ気体を、今度は圧力を止めて 上げます。
内部エネルギーの増えぶんは温度だけで決まるので、さきほどと同じ値。
同じ温度上昇に、 だけ多く熱が要りました。その分がふたを押す仕事に回っている。
等温変化 — 内部エネルギーが動かない
温度を止めると、理想気体の内部エネルギーは変わりません。 が温度だけで決まるからです。
第一法則の左辺が消えるので、受けとった熱がそのまま仕事になる。
熱が入り続けているのに温度が上がらない、という不思議な過程です。入った分がそのまま出ていくので、たまらない。
実現するには、大きな熱源に触れさせたままゆっくり動かします。急に動かせば温度がついてこない。
- 図では が一定なので双曲線をたどる。仕事はその曲線の下の面積で、値を式で出すには対数が要るので高校では扱いません。面積として読むか、 の関係から求める。
例:等温変化で熱と仕事を比べる
等温を保ったまま気体を膨張させ、外へ の仕事をしました。
なので、第一法則はそのまま次の形になる。
の熱が入り、 が仕事として出ていきました。温度は 1 度も上がっていません。
断熱変化 — 熱の出入りがない
熱を通さない壁で囲むか、熱が伝わる暇がないほど速く動かすと、熱の出入りが止まる。
このとき第一法則は 2 項だけになる。
膨張すれば が正なので は負になり、温度が下がります。圧縮すれば逆で、温度が上がる。
この過程でだけ「仕事をした分だけ内部エネルギーが減る」が成り立ちます。ほかの過程では熱が入ってくるので、そうなりません。
圧力と体積の関係は が一定という形になり、 を比熱比といいます。単原子分子なら 、二原子分子なら 。
例:断熱膨張で温度が下がる
単原子分子の理想気体 が、熱を通さない容器のなかで膨張し、外へ の仕事をしました。
なので内部エネルギーは仕事の分だけ減る。
温度が 下がりました。熱を一切奪っていないのに冷えている。スプレー缶を使うと缶が冷たくなるのは、この形の変化です。
4 つの装置を並べる
同じ気体を同じだけ温めても、装置の作りが違えば行き先が変わる。
等温では分子の色が変わりません。熱源が温度を押さえているからです。等積ではふたが留め具で止まり、色だけが動く。
断熱では熱が入っていないのに、押しこまれた側で色が変わります。仕事が温度に化けている。
収支を見比べる
同じ図を第一法則の 3 つの量で描き直すと、消える項がはっきりする。
断熱変化だけ内部エネルギーの棒が左へ伸びます。熱をもらわずに仕事を出すので、内部エネルギーを削るほかない。
どの場合も が成り立っています。棒の長さで確かめられる。
断熱曲線が等温曲線より急な理由
同じ点から膨張させたとき、断熱のほうが圧力の下がり方が速くなります。理由は温度にある。

等温では膨張しても温度が変わらないので、圧力は体積が増えたぶんだけ下がります。 が一定という形。
断熱では膨張と同時に温度も下がる。圧力は体積の増加と温度の低下の二重の理由で下がるので、落ち方が急になります。
式で言えば の が より大きいところに現れる。指数が大きいほど曲線は速く落ちます。
同じ状態から同じ体積まで膨張させたとき、気体がする仕事が大きいのはどちらですか。
- 断熱変化
- 等温変化
- どちらも同じ
- 気体の種類で決まる
4 つを表で並べる
消える量と第一法則の形をまとめます。
| 過程 | 止める量 | 第一法則の形 |
|---|---|---|
| 等温 | 温度 | Q = W |
| 等圧 | 圧力 | Q = ΔU + W |
| 等積 | 体積 | Q = ΔU |
| 断熱 | 熱の出入り | ΔU = -W |
- 図での形と仕事の求め方も並べておく。
| 過程 | p-V 図での形 | 仕事の求め方 |
|---|---|---|
| 等温 | 双曲線 | 面積を読む |
| 等圧 | 水平線 | W = pΔV |
| 等積 | 垂直線 | W = 0 |
| 断熱 | 等温より急な曲線 | W = -ΔU |
等圧だけが 3 つとも残ります。ほかの 3 つはどれか 1 つが消えるので、式が 2 項で済む。
解く順序
問題文を読んだら、まず何が止まっているかを探します。そこから消える量が決まる。
止めている量を見つける
・・ のどれが 0 か決める
残りを第一法則でつなぐ
はいつでも で出せます。過程によらず温度だけで決まるので、ここを先に押さえると早い。
を使うのは等圧のときだけです。ほかの過程で を持ち出すと合わなくなる。
例:2 つの過程をつなぐ
単原子分子の理想気体を、まず体積を止めて 上げ、続けて圧力を止めて 下げます。物質量は とする。
前半は で、熱がすべて内部エネルギーに入る。
後半は温度が下がるので が負になり、体積も縮むので仕事も負になる。
温度はもとに戻ったので、2 段合わせた はゼロです。出入りした熱の合計は で、外から の仕事をされたぶんと釣り合っている。
サイクルにすると囲む面積が仕事
過程をつないで元の状態に戻すと、 は必ずゼロになります。 が状態だけで決まるからです。
1 周のあいだに正味で受けとった熱が、そのまま正味の仕事になる。その値が - 図で囲んだ面積です。
時計まわりにたどると仕事は正で、外へエネルギーを出します。熱機関の動き方。
反時計まわりなら仕事は負になり、外から仕事を入れて熱を運ぶことになります。冷蔵庫やエアコンがこちら。
よくある誤り
最後に、間違えやすいところを並べます。












仕事は p-V 図の曲線の下の面積です。等温曲線のほうが上を通るので、面積も大きくなります。