ボイル・シャルルの法則と気体の状態方程式をくわしく説明
気体の圧力と体積と温度は、たがいに独立ではありません。一つを変えれば、残りのどれかが必ず動く。
三つをまとめて 1 本の式にしたものが気体の状態方程式です。
以下では圧力と体積の関係、温度と体積の関係を順に確かめ、二つを合わせたボイル・シャルルの法則を作ります。そこに物質量を入れて状態方程式にたどり着くまでが本題です。
使う文字と単位
先に文字を決めておきます。単位をそろえないと数値が合わないので、ここが出発点になる。
| 圧力 | |
| 体積 | |
| 温度 | |
| 物質量 |
温度は必ず絶対温度です。セルシウス温度では法則が成り立たない。その理由はあとの節で確かめます。
圧力を上げると体積は縮む
温度と物質量を変えずに圧力だけを変えると、体積は圧力に反比例する。これがボイルの法則です。
は定数で、温度と物質量が決まれば決まります。二つの状態を比べる形にすると使いやすくなる。
注射器の先をふさいで押しこむと、押すほど固くなる。中の分子の数は変わらないのに、狭い箱に押しこめられるぶん壁を叩く回数が増える。増えた回数が圧力の上昇です。
赤いふたが右へ戻ると箱は広がり、青い棒が下がる。体積が半分になれば圧力は 2 倍、体積が 3 分の 1 になれば圧力は 3 倍。積がいつも同じ値に落ち着く関係です。
例:圧力を 3 倍にする
で の気体を、温度を変えずに まで圧縮します。
圧力が 3 倍なら体積は 3 分の 1 です。両辺の単位がそろっていれば、L のままで計算して差し支えありません。左右で同じ単位を使う点だけが条件になる。
p-V 図で見ると双曲線になる
横軸に体積、縦軸に圧力をとって を描くと、原点に近づけない曲線が現れる。

曲線上のどの点から長方形を作っても、面積は同じ になる。縦に細長い長方形と横に平べったい長方形が同じ面積で釣り合う、これがボイルの法則の見え方です。
軸に触れることはありません。体積を 0 にできないのは、圧力をいくら上げても分子そのものが場所を占めるからです。
温度を上げると体積は増える
圧力と物質量を変えずに温度を上げると、体積は絶対温度に比例する。シャルルの法則です。
ふたが自由に動くピストンを温めると、ふたは押し上げられる。外の大気がふたを押す力は変わらないので、中の圧力も変わらない。そのぶん体積が伸びます。
分子の動きも同時に速くなる。速い分子が広い箱を叩けば、回数あたりの勢いは増えても壁に届く頻度は下がる。二つが釣り合って圧力が保たれます。
絶対温度でなければ比例にならない
シャルルの法則をセルシウス温度で書くと、比例の形になりません。 で体積が 0 にならないからです。
の体積を 、セルシウス温度を とすると、実験から次の形が出る。
この式の右辺が 0 になるのは のときです。そこを原点にとり直した目盛りが絶対温度で、単位はケルビン。両者は 273 だけずれた同じものです。

二段の目盛りが同じ位置に並んでいます。上の段のケルビンで測ると、直線は原点を通る。だから が一定になる。
セルシウス温度で を作ると意味のない量です。 で割り算が壊れ、負の温度では符号まで狂う。単位が K であることは、法則の形そのものにかかわっています。
例:0 °C の気体を 100 °C にする
で の気体を、圧力を変えずに まで温めます。まず温度を K に直します。
セルシウス温度のままだと という割り算が現れ、計算できません。温度が絡む式では、代入の前に K へ直す。
二つを合わせる
ボイルの法則は温度を止めた話、シャルルの法則は圧力を止めた話でした。両方が動くときは二つを掛け合わせる。
温度を止めて圧力を変える
圧力を止めて温度を変える
が一定になる
結果は 1 本の式になる。これがボイル・シャルルの法則です。
を止めれば が一定に、 を止めれば が一定に戻ります。もとの二つを含んだ形になっている。
例:三つの量が同時に変わる
、 で の気体を、、 にします。
温度を K に直すと と です。
圧力が半分になったぶんで 2 倍、温度が 倍になったぶんで 倍。合わせて 倍が答えの正体です。
の気体を、圧力を変えずに体積 2 倍にするには何度まで温めますか。
物質量を法則に入れる
は定数と書きましたが、物質量を変えれば値も変わります。物質量を倍にすれば、同じ圧力と温度でも体積は倍になる。
温度と圧力を止めたとき、体積は物質量に比例する。アボガドロの法則です。
同じ温度と同じ圧力で同じ体積をとれば、気体の種類が違っても分子の数は同じになる。分子の重さも大きさも関係ありません。
左は小さい分子、右は大きい分子です。それでも数は同じ 18 個。分子の大きさを無視できるほど空間が広い、という前提がここに効いています。
気体の状態方程式
三つの法則を合わせると、 が物質量に比例することになる。比例定数を と書きます。
ふつうは分母を払った形で書きます。
は気体定数で、気体の種類によらない一つの値です。単原子でも二原子でも同じ値を使う。
国際単位系の 2019 年の改定で は定義値になり、 と誤差なしで決まっています。高校では で足ります。
例:気体定数の値を求める
は覚える数値ではなく、測った量から出せる値です。、 で の気体は を占める。
体積を に直します。 です。
この値は を基準にしたもので、正確には です。
国際純正・応用化学連合が基準を に変えたあとの標準状態では、 になる。高校の問題文が と書いていれば 基準です。
単位をそろえる
状態方程式でいちばん多い失点が単位です。 の値は単位の組と一対一に対応しているので、片方だけ替えると答えが桁ごとずれる。
を使います。 なので、 は です。この組が基本になります。
です。 は の 1000 分の 1 なので、 が 1000 倍になります。
です。化学で見かける値で、 は になります。
温度だけは選択肢がありません。 を入れた式は最初から成り立ちません。
比をとるボイル・シャルルの法則なら、左右で単位がそろっていれば L でも mL でも計算できます。状態方程式のように を掛ける式では、 の単位に合わせるほかありません。この違いが混同のもとになる。
例:容器の中の分子の数
の容器に 、 の気体が入っています。分子の数を求めます。
にそろえて物質量を出す。
これにアボガドロ定数 を掛けます。
分子 1 個あたりで書き直した形も知られています。 をアボガドロ定数で割った をボルツマン定数といい、 となる。高校では のほうを使います。
温度は分子の速さで決まる
状態方程式は測った量だけの関係ですが、中身は分子の運動です。温度が上がることは、分子の平均の速さが増すことにあたる。
箱の大きさも分子の数も同じで、違うのは速さだけです。右の箱では衝突の回数が速く積み上がる。体積を変えずに温度を上げれば圧力が上がる、という関係がここに現れています。
三つの過程を p-V 図で見る
同じ状態から出発しても、どれを一定に保つかで進み方が変わる。
等温の道だけが曲がります。 が一定なので双曲線をたどる。等圧は横に、等積は縦にまっすぐ進みます。
横に進むので体積が変わります。温度も同時に動き、 が一定に保たれる道です。
縦に進むので体積は変わりません。温度を上げれば圧力だけが上がり、 が一定になります。
断熱の道はこの三つに入りません。熱の出入りを止めるので、等温よりも急な曲線になる。
理想気体という約束
ここまでの式は、分子について二つのことを無視してきました。分子そのものの大きさと、分子どうしが引き合う力です。
この二つを無視した気体を理想気体といいます。無視できるのは、分子が広い空間にまばらに散っているとき。
圧力が低く温度が高いほど、実在の気体は理想気体に近づきます。
逆に高圧や低温では合わなくなり、やがて液体になる。液体になった気体に状態方程式は当てはまりません。
ヘリウムやアルゴンのような単原子の気体はよく合う。分子が大きく重くなるほどずれが増える。高校の問題で「理想気体とする」と書いてあるのは、この二つを無視してよいという指示です。
状態方程式 が実際の気体によく当てはまるのはどの条件ですか。
- 高い圧力で低い温度
- 低い圧力で高い温度
- 高い圧力で高い温度
- 圧力と温度によらずいつでも
分子の大きさと分子間力を無視できるのは、分子がまばらで速く動いているときです。圧力を下げて温度を上げると、その条件に近づきます。
よくある誤り
最後に、間違えやすいところを並べます。












K に直すと 300 K です。2 倍の 600 K を戻して 327 ∘C になります。54 ∘C はセルシウス温度を 2 倍にした誤りです。