一般化座標と拘束条件(解析力学)
ニュートン力学では、物体の運動を記述するために直交座標 を使います。しかし、すべての問題で直交座標が最適とは限りません。振り子の運動を考えるとき、本当に知りたいのは糸の角度 だけであって、 と の両方を追いかける必要はないはずです。
解析力学では、問題に合った座標を自由に選ぶことができます。この「問題に合った座標」を一般化座標と呼び、座標選びの鍵となるのが拘束条件です。
拘束条件とは
物体の運動が何らかの制限を受けているとき、その制限を拘束条件と呼びます。たとえば、長さ の糸につながれた振り子では、おもりは糸の長さ分だけ原点から離れた円弧上しか動けません。これを数式で書くと次のようになります。
この式が拘束条件です。もともと の 2 つの変数がありましたが、拘束条件が 1 つあるため、独立に動ける方向は つに減ります。この独立に動ける数を自由度と呼びます。
の 2 変数で記述し、拘束力(糸の張力)を未知数として運動方程式に含める
拘束条件を使って変数を減らし、角度 の 1 変数だけで記述する。拘束力は方程式に現れない
一般化座標
拘束条件を考慮した後に残る、系の状態を完全に指定できる独立な変数の組を一般化座標といいます。一般化座標は のように書かれ、 は系の自由度に一致します。
一般化座標は直交座標 である必要はありません。角度でも、距離でも、問題を記述するのに便利な量であれば何でも構いません。振り子の場合、角度 が一般化座標になります。元の直交座標との関係は次の通りです。
このように、一般化座標 さえ決まれば と は自動的に決まります。拘束条件を最初から座標に組み込んでいるため、余計な変数や拘束力を持ち歩く必要がなくなるわけです。
自由度の数え方
個の質点が 3 次元空間にあるとき、座標の総数は です。ここに 個の拘束条件がある場合、自由度 は次のように求まります。
質点 1 個、2 次元、拘束 1 つ(糸の長さ)。自由度は で、一般化座標は 。
質点 2 個、2 次元、拘束 2 つ(2 本の糸の長さ)。自由度は で、一般化座標は 。
質点 1 個、2 次元、拘束 1 つ(斜面上に拘束)。自由度は で、一般化座標は斜面に沿った距離 。
この「自由度 = 座標数 − 拘束数」という数え方は非常に便利で、複雑な系でも独立変数の数をすぐに判断できます。
拘束の分類
拘束条件にはいくつかの種類があります。解析力学で最も扱いやすいのはホロノミック拘束です。
ホロノミック拘束は、座標と時間だけの等式で表せる拘束です。一般的に次の形で書けます。
先ほどの振り子の例 はホロノミック拘束の典型例です。このタイプの拘束は座標変換によって消去できるため、自由度を直接減らすことができます。
一方、非ホロノミック拘束は等式ではなく不等式で表される拘束や、速度を含む拘束のことを指します。たとえば、箱の中に閉じ込められた粒子は のような不等式で制限されますし、滑らずに転がる球の拘束条件には速度が含まれます。非ホロノミック拘束は単純な座標変換では消去できないため、扱いがやや複雑になります。
| 拘束の種類 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| ホロノミック | 座標と時間の等式 | 振り子、剛体 |
| 非ホロノミック | 不等式や速度を含む | 転がる球、箱の中の粒子 |
一般化座標を使うメリット
一般化座標の導入によって、力学の問題は大きく見通しがよくなります。
まず、拘束力が方程式から消えます。ニュートン力学では糸の張力や垂直抗力といった拘束力を一つ一つ書き下す必要がありましたが、一般化座標を使えばそれらは最初から考慮済みです。
次に、座標系の選択が自由になります。直交座標に縛られず、問題の対称性に合った座標を選べるため、方程式が簡潔になります。球対称な問題には極座標、円筒対称には円筒座標、といった具合です。
そして、自由度の数だけ方程式を立てれば十分です。100 個の粒子に 200 個の拘束がある系でも、自由度が 100 なら 100 本の方程式で済みます。
この考え方は次のステップであるラグランジュ力学へと自然につながっていきます。
一般化座標と最小作用の原理を組み合わせて運動方程式を導く手法。
一般化座標と拘束条件は、解析力学のすべての議論の土台です。「問題の本質的な自由度は何か」を見極め、それに合った座標を選ぶ — この発想がニュートン力学との決定的な違いであり、より複雑な系へと進むための出発点になります。