連続の方程式 — 質量保存則の流体版
流体の運動を記述するうえで、最も基本的な法則の一つが連続の方程式だ。これは「流体の質量は勝手に増えたり消えたりしない」という質量保存則を、流れの言葉で表現したものにほかならない。
直感的な理解
ホースで水を撒く場面を考えてみよう。ホースの先端を指で潰して出口を狭くすると、水の勢いが増す。これは出口の断面積が小さくなっても、単位時間あたりに通過する水の量は変わらないからだ。断面積が半分になれば、流速は 2 倍になる。この単純な事実こそが連続の方程式の本質である。
断面積が大きく、流速は遅い
断面積が小さく、流速は速い
どちらの場合も、単位時間に通過する水の体積は等しい。これが質量保存の帰結だ。
1 次元の定常流
最もシンプルな形から見ていこう。断面積が変化するパイプの中を非圧縮性流体(密度 が一定の流体)が定常的に流れているとする。位置 1 での断面積を 、流速を 、位置 2 での断面積を 、流速を とすれば、質量保存から次の関係が成り立つ。
密度が一定なので は消去でき、非圧縮性流体の連続の方程式が得られる。
この積 は体積流量と呼ばれ、単位は だ。パイプのどの断面でも体積流量が等しいというのが、この式の主張である。
一般的な微分形
実際の流体は 3 次元空間を自由に動く。任意の点での質量保存を微分形で書くと、連続の方程式は次のようになる。
ここで は密度、 は速度場、 は発散(ダイバージェンス)を表す。この式は「ある微小領域内の密度の時間変化は、その領域から流出する質量流束に等しい」ということを述べている。
ある点での密度の時間変化率。定常流ではゼロになる。
質量流束 の発散。流体がその点から正味で流出しているかどうかを表す。
非圧縮性流体では が一定なので、連続の方程式はさらに簡潔になる。
速度場の発散がゼロ、つまり「湧き出しも吸い込みもない」ことを意味する。この条件は非圧縮性流体を扱う多くの問題で出発点となる。
具体例で確かめる
直径 10 cm のパイプが途中で直径 5 cm に細くなっている場合を考えよう。太い部分での流速が のとき、細い部分の流速はいくらか。
を適用
断面積は半径の 2 乗に比例するため、直径が半分になると断面積は になり、流速は 4 倍になる。日常で経験するホースの現象と一致している。
連続の方程式の意義
連続の方程式は、流体力学における他の基本方程式(オイラーの運動方程式やナビエ–ストークス方程式)と組み合わせて使われる。運動方程式が「流体がどう加速するか」を記述するのに対し、連続の方程式は「流体がどこにどれだけ存在するか」の制約条件を与える。この 2 つが揃って初めて、流れの全体像を決定できるのだ。
また、連続の方程式は流体力学に限らず、電磁気学での電荷保存則や拡散方程式など、保存則が成り立つあらゆる物理現象に同じ構造で現れる。質量保存という素朴な原理が、物理学全体を貫く普遍的な数学的形式を持っていることは注目に値する。