太陽が 1 つきりでいるのは、むしろ珍しいことです。空の星の半分以上は 2 つ、あるいはそれ以上の組になっていて、たがいの重力でつながったまま、一生のあいだ回り続けます。
軽いほうが重いほうを回っている、と思いたくなりますが、そうではありません。2 つとも、あいだにある 1 点のまわりを回っています。その点を共通重心といい、どちらの星も止まってはいません。
太陽と地球も同じことをしています。太陽は 1 年に 1 度、2 つの共通重心のまわりを回っています。たまたまその点が太陽の中にあるので、振れが小さくて見過ごせるだけです。
2 つの質量が近いほど、共通重心は真ん中へ寄ります。同じ質量の星が 2 つなら、ちょうど中点にあります。
共通重心は重いほうへ寄ります。寄り方は決まっていて、共通重心からそれぞれまでの隔たりを a_1、a_2 とすると M_1 a_1 = M_2 a_2 です。
つまり重い星のほうが、描く円は小さくなります。1 周ぶん見て、それぞれがどれだけ振れたかを測れば、その比がそのまま質量の比です。ほかには何も要りません。
ただし比だけでは、それぞれの質量は決まりません。片方がもう片方の 3 倍だと分かっても、3 と 1 の組も 30 と 10 の組も、どちらもありえます。
足りないのは和です。比と和がそろえば、それぞれの質量が出ます。その和を与えるのが次の話です。
ケプラーは惑星について、軌道の大きさの 3 乗が周期の 2 乗に比例することを見つけました。ニュートンはその理由を示し、さらに比例の定数が何かを示しました。それは質量の和です。
距離を天文単位、時間を年、質量を太陽で測る単位にすると、関係はちょうど \dfrac{a^3}{P^2} = M_1 + M_2 になります。
太陽のまわりを回る惑星なら和はほぼ 1 なので、a^3 = P^2 です。地球は a = 1 で P = 1、それだけのことです。
連星では和が 1 ではないので、そのぶんだけ周期が惑星の場合とずれます。そのずれが質量の和です。振れから比が、ここから和が出れば、2 つの質量が決まります。星の重さを直に量れる方法は、これしかありません。
軌道の面がたまたま視線に近い向きにあると、1 周のあいだに 1 度ずつ、それぞれがもう片方の前を通ります。この組を食連星といいます。
隠れているあいだは届く光が落ちます。1 周ぶんの落ち方を並べたものが光度曲線です。谷が 2 つでき、その深さは同じになりません。
深いほうの谷は、熱いほうが隠れたときです。どちらの回も隠される面積は同じですが、面あたりで明るい側を隠すほうが、失われる光が多くなります。どちらの谷が深いかで、どちらが熱いかが分かります。
谷の幅は、円盤を横切るのにかかった時間なので、そこから星の半径が出ます。食連星は質量と半径の両方を出せます。恒星の構造の計算は、この組で確かめられています。
連星の多くは近すぎて、2 つには見えません。望遠鏡の中では 1 つの点で、その姿からは 2 つあることが分かりません。
分かるのはスペクトルです。片方がこちらへ振れているあいだ、その星の吸収線は青のほうへずれます。遠ざかるあいだは赤のほうへずれます。ドップラー効果で、ずれの大きさは視線に沿う速さに比例します。
2 つはいつでも逆向きに動いているので、2 組の線は 1 周に 1 度ずつ開いては閉じます。ずれの大きさの比は速さの比で、これもまた質量の逆比です。
まだ足りないものが 1 つあります。軌道が傾いていると、見えるのは視線に沿う分だけなので、結果に \sin i が残ります。i は傾きです。その組が食連星でもあれば、傾きはほぼ真横だと分かるので、質量がそのまま出ます。星の質量の目盛は、そういう組の上に立っています。