鉄を熱していくと、はじめは暗い赤に光り、やがて橙になり、さらに熱くすると白に近づきます。鉄そのものは何も変わっていないのに、温度が上がるだけで色が変わります。星も同じことをしています。
熱い物体は、1 つの波長だけで光るのではありません。あらゆる波長で同時に光っていて、ただし出る量が波長ごとに違います。どの波長にどれだけ出ているかを描くと、山を 1 つ持つ曲線になります。これが黒体放射の曲線で、その形は温度だけで決まります。
温度を上げると、山は波長の短いほうへ動きます。下げると長いほうへ動きます。この動きが、目には色の違いとして映ります。
目に入るのは 380 から 780 nm あたりまでです。曲線全体から見れば狭い窓なので、星の色と呼んでいるものは、曲線の一部をのぞいた姿ということになります。
山がどこに来るかは、式で書けます。山の波長に温度を掛けると、いつでも同じ数になります。ナノメートルとケルビンで書けば \lambda_{\max} T = 2.9 \times 10^{6} です。ウィーンの変位則といいます。
数を入れてみます。5800 K の太陽は 500 nm ほどで、ちょうど目に見える窓の真ん中です。3000 K の赤い星は 970 nm ほどで、赤外線の側へ出ます。30000 K の青白い星は 97 nm ほどで、紫外線の側へ出ます。
つまりほとんどの星では、山そのものは目に見えません。見えているのは山の斜面で、その斜面が窓の中をどう横切るかが、赤っぽく見えるか青っぽく見えるかを決めています。
この法則は逆にも使えます。色を測れば温度が出ます。ここに距離は要りません。だから温度は、星について最初に分かる量になります。
曲線からはもう 1 つ読めます。曲線の下の面積を足し上げると、表面の単位面積から 1 秒間に出ていくエネルギーの総量になります。それが E = \sigma T^4 で、シュテファン・ボルツマンの法則といいます。\sigma は決まった数です。
4 乗は急です。温度を 1.5 倍にすると面積は 5 倍ほどになり、2 倍にすると 16 倍になります。温度の少しの違いが、出る量の大きな違いになります。
星は表面全体から出しているので、光度には表面積も掛かります。L = 4\pi R^2 \sigma T^4 です。温度と半径が決まれば光度が決まり、ほかには何も入りません。
HR 図に引いた等半径の線は、この 1 本の式から出ています。温度が同じなのに明るさが違う 2 つの星は、半径が違うほかにありません。
太陽の光を細かく分けていくと、色の帯はなめらかではありません。決まったところに、細い暗い線が刻まれています。19 世紀のはじめにフラウンホーファーが何百本も数えました。それが何なのかは、まだ誰も知りませんでした。
光そのものは内側の濃いところから来ていて、そこを出るときはあらゆる波長を持っています。外へ出るとちゅうで外側の薄い気体を通り、そこで原子が、自分の受け取れる波長だけを取り返します。
どの波長を取れるかは、原子の中で電子が上がれる段の差で決まります。段は元素ごとに違うので、水素は水素の場所に線を刻み、ナトリウムやカルシウムは別の場所に刻みます。並びがそのまま署名になります。
だから暗い線は、星が何でできているかをここから読む手だてになります。ヘリウムは、地球で見つかるより先に太陽のスペクトルの中で見つかりました。名前もそこから来ています。
星ははじめ、水素の線の濃さの順に A, B, C とアルファベットで分けられていました。のちにいくつかの型がまとめられ、並びも入れ替えられて、残ったのが O, B, A, F, G, K, M という順です。
並べ替えて何が起きたかというと、温度の順になりました。O がいちばん熱くて 40000 K ほど、M がいちばん冷たくて 3000 K ほどです。整理のための記号だったものが、そのまま物理の並びでした。
水素の線は 9000 K ほどの A 型でいちばん濃く、そこから両側へ薄くなります。これより熱いと水素が電離してしまい、線を作る電子がありません。これより冷たいと電子が下の段にとどまったままで、その波長を受け取れません。中ほどの温度でだけ線が濃くなります。
それぞれの型はさらに 0 から 9 に分けられ、太陽は G2 型です。次の記事の HR 図の横軸はこの並びそのもので、それを読むことは温度を読むことです。