はじまってからの数分のあいだ、宇宙ぜんたいが核融合できるほど熱く濃くありました。陽子と中性子がたがいを見つけて原子核を組み、しばらくのあいだ、宇宙は今の星の中心と同じことをしていました。
それは続きませんでした。宇宙はそのあいだも膨らんで薄くなり続け、20 分ほどで、どこでも核融合ができないほど冷たく、まばらになりました。
そこから出てきたのは水素とヘリウムで、質量で数えるとおよそ 75 パーセントと 25 パーセントです。質量ではなく原子核の数で数えると、水素は 92 パーセントほどになります。ヘリウムの原子核は 4 倍重いからです。
ほかにリチウムがわずかにできただけで、あとは何もできませんでした。質量数 5 と 8 には安定な原子核がないので、その短い時間ではヘリウムより先へ進む道がありません。炭素も酸素も鉄も、みなあとから、星の中でできたものです。
星は中心で水素をヘリウムに変えます。中心の水素が尽きると、そこは縮んで熱くなり、十分に熱くなればヘリウムそのものが燃えはじめて、炭素になります。
重い星では、この続きがあります。炭素はネオンとマグネシウムへ、ネオンは酸素へ、酸素はケイ素へ、ケイ素は鉄へ燃えます。どの段も前の段より高い温度を要り、そして前の段より速く終わります。水素は何百万年ももちますが、ケイ素は 1 日ほどで終わります。
中心が先へ進んでも、前の層が消えるわけではありません。それぞれが自分の深さで燃え続けるので、星は層になります。中心へ行くほど重く、表面へ行くほど軽い並びです。
積み上げは鉄で止まります。燃料が尽きるからではありません。鉄は、何も返してくれないからです。
どの原子核についても、核子 1 個をどれだけ強く束ねているかを問うことができます。それを質量数の順に並べると、軽いほうで急に登り、平らになり、頂きを取って、ゆるやかに下る曲線になります。
より強く束ねられた原子核へ移ると、その差がエネルギーとして出ます。核融合のエネルギーはここから来ていて、曲線が登っているあいだしか融合が得にならないのも、これが理由です。
頂きは鉄で、質量数は 56 です。何であれ鉄にすればエネルギーが出ます。鉄をそれより重いものにするにはエネルギーが要り、割るのにも要ります。
この 1 つの事実が、重い星の一生を終わらせます。芯が鉄になった時点で、星を支えられる反応はもう残っていません。そのあとに起きるのが、前の記事の崩壊です。
融合で鉄より先へ行けないなら、別の作り方があるはずです。金もウランも現にあります。答えは中性子です。電気を持たないので反発されず、原子核はどんな速さの中性子でも取り込めます。
中性子を取り込みすぎた原子核は不安定で、そのうちの 1 個が陽子に変わります。原子番号が 1 つ上がり、別の元素になります。これをくり返せば、元素は登っていきます。
できあがるものを決めるのは、中性子が届く速さです。巨星の中では何千年もかけて 1 個ずつ届きます。次の 1 個が来る前に、不安定な原子核が崩れきるほどゆっくりです。これを s 過程といい、安定な原子核の線に沿ってビスマスあたりまで積み上げます。
もう 1 つの道には奔流が要ります。崩れるより先に何十個も取り込むほど、1 秒のうちに中性子が来る場です。それが起きるのは、中性子星どうしがぶつかるときです。これを r 過程といい、金・白金・ウランはここから来ます。2017 年にそのぶつかり合いが 1 つ見つかりました。そのとき作られた金だけで、地球より重いものでした。
太陽が元素をどれだけ持っているかを測り、原子番号の順に並べます。出てくる形はなめらかではなく、でこぼこのどれにも意味があります。
水素とヘリウムがほかを見下ろしていて、続くものより 8 桁上にあります。これははじまりの残りもので、そのあと何が起きても目減りしていません。
リチウム・ベリリウム・ホウ素のところは深い穴です。この 3 つは弱くて、星の中では作られるより先に壊されます。今あるぶんは、宇宙線が重い原子核を空間で割って作ったものがほとんどです。
鉄のところに小山があります。束ねの曲線の頂きが、そのまま透けて出ています。この図でヘリウムより上にあるものはみな星の中で組み立てられ、星が終わるときに宇宙空間へ返されたものです。地球を作っている材料も、私たちの血の中の鉄も、太陽が生まれる前にその輪をくぐってきました。