分子雲が縮んでから主系列に入るまでの星の形成

星は、いちばん冷たくて濃いところで始まる

星と星のあいだは空ではありません。ほとんどが水素の気体で、1 立方センチメートルに原子が 1 個ほどです。地球で作れるどんな真空よりうすく、そのままでは何も起きません。

ところどころで、この気体が集まって雲になります。濃さは 1 立方センチメートルあたり数千から数百万個まで上がり、温度は 10 から 20 K まで下がります。この温度では水素が分子のままでいられるので、分子雲と呼ばれます。

冷たいことと濃いことが、そろっているのが大事です。冷たければ原子の動きが遅く、圧力が低くなります。濃ければ重力が強くなります。2 つとも同じ向きに効きます。

雲の中の濃さは一様ではありません。星が生まれるのはいちばん濃い芯のところで、大きさは 1 光年に満たず、太陽の数倍ほどの質量を抱えています。

支えきれなくなる質量がある

気体の塊には、2 つの力がかかっています。自分の重力が内へ引き、圧力が外へ押します。どちらが勝つかは程度の問題ではありません。釣り合いがひっくり返る質量が、はっきりとあります。

その質量より軽ければ、押し縮めても圧力のほうが重力より速く上がるので、跳ね返って戻ります。重ければ、押し縮めるほど重力のほうが速く効くので、そのまま行きます。落ちはじめたら止まりません。

この境目をジーンズ質量といい、M_{\mathrm{J}} \propto T^{3/2} \rho^{-1/2} に従います。冷たいほど、濃いほど境目は下がります。冷たくて濃い芯で星が生まれるのは、これが理由です。

いったん境目を越えると、その芯を支えるものは何もありません。落ちきるまでにかかるのは 10 万年ほどで、星の時間としては一瞬です。

落ちる気体は回りを速め、平らになり、2 本を噴き出す

気体はまっすぐ落ちてはきません。どの雲もわずかに回っていて、縮むにつれてその回りが速くなります。腕を縮めたスケーターが速く回るのと同じことです。

回りの軸に沿う向きには止めるものがないので、気体はまっすぐ落ちます。赤道の側では回りが支えるので落ちきれず、円盤になって落ち着きます。真ん中に育っていく塊があり、そのまわりに平らな円盤がある、という形になります。

この円盤は、のちに惑星ができるところです。真ん中まで届かなかった材料が、そこに残ります。どの惑星系も、はじめはこの円盤でした。

余った回りをどこかへ捨てないと、円盤の中身は星へ落ちていけません。その答えの一部が、軸の向きへ撃ち出される 2 本の噴き出しです。中まで見通せないほど厚い雲のなかで星が生まれつつあることは、これでいちばんはっきり分かります。

縮むほど中心は熱くなり、やがて核融合が点く

落ちる気体は重力のエネルギーを手放し、それが真ん中で熱になります。縮むほど中心が熱くなるのは、そのためです。この段階のものを原始星といい、光ってはいますが、光っているのは自分が落ちている熱だけです。

その元手は長くもちません。太陽ほどの大きさなら数千万年で尽きます。星の一生から見れば無いに等しく、別のものが引き継がなければなりません。

中心は上がり続け、10^{7} K ほどで水素の原子核が融合しはじめます。その瞬間から、何十億年ももつ元手を手に入れます。

縮むのはそこで止まります。偶然ではありません。新しく出たエネルギーが圧力を上げ、上に乗る重さと釣り合ったところで止まるからです。前の記事の静水圧平衡そのものです。星は、一生のほとんどを過ごす姿にたどり着きました。

どの星も、右上から降りてきて帯に着く

ここまでを HR 図に載せると、1 本の道筋になります。原始星は大きくて表面が冷たいので、まず右のほうから始まります。大きいぶん明るいので、上のほうからでもあります。

縮むにつれて表面積が減るので、温度はほとんど動かないまま光度だけが落ちていきます。図の上では、ほぼまっすぐ下へ落ちます。

核融合が点くと縮むのが止まり、点も止まります。止まった先が主系列で、その帯のどこで止まるかは質量だけで決まります。質量と寿命の記事のとおりです。

星が降り立つこの線を、零歳主系列といいます。帯に乗っているものはみなこの道で来て、みな次の記事のやり方で帯を離れます。

星を測る
恒星の構造と進化
元素と星間物質
宇宙の膨張