動く斜面台からすべり出た物体と磁場中の円運動の衝突(2026 年 京都大学 物理 問題 I)

2026 年 京都大学 前期 理科(物理) 第 1 問

次の文章を読んで,[ ]に適した式または数値を,{ } からは適切なものを一つ選びその番号を,それぞれの解答欄に記入せよ。また,問 1 〜 問 4 では,指示に従って,解答を解答欄に記入せよ。設問においては,水平な床を高さの原点とし,床面の摩擦は無視できるものとする。斜面と床とのなす角は 未満の正の角)であり,斜面が床と接する微小な部分は滑らかに水平な床に接続しているものとする。また,重力加速度の大きさを とし,空気抵抗は無視してよい。

(1) 図 1 のように,床の上に質量 の斜面状の台(斜面台と呼ぶ)を静止させ,斜面上の高さ の位置に質量 の物体 を静かに置く。物体 の大きさは無視できるものとする。物体 は,斜面から床の上にすべり落ちたのち,水平運動に移行した。以下では,条件が異なる (a), (b), (c) の場合について,それぞれ考える。なお,物体 の斜面から床への運動の変化はなめらかになされ,その際に全体の力学的エネルギーは保存されるものとする。また,速度については,右向きを正とし,符号にも注意せよ。

(a) 斜面台が床に固定されていて,物体 と斜面との摩擦が無視できる場合を考える。物体 にかかる合力の鉛直方向成分は,上向きを正とすると [ア] であり,物体 が斜面に置かれてから床に到達するまでの時間は,[イ] である。また,水平運動に移行したあとの物体 の速さは,[ウ] になる。なお,斜面台の斜面から水平に移行する微小な部分の大きさは無視できるものとする。

(b) 斜面台が床に固定されておらず,物体 と斜面に一定の動摩擦力がはたらく場合,静止した斜面台の上に物体 を静かに置くと,物体 は斜面をすべり落ちたのち,床の上で速度 の水平運動をおこなった。このとき,物体 が離れたあとの斜面台の速度を とすると, [エ] である。なお,斜面台と床の摩擦は無視できるものとする。

(c) 斜面台が床に固定されておらず,物体 と斜面との摩擦が無視できる場合,静止した斜面台の上に物体 を静かに置くと,物体 は斜面をすべり落ちたのち,床の上で速度 [オ] の水平運動をおこなう。このとき,物体 が離れたあとの,斜面台の水平運動の速度は [カ] になる。なお,斜面台と床の摩擦は無視できるものとする。

問 1 図 2 のように,質量 の同じ斜面台を逆向きにもう 1 つ配置する。2 つの斜面台は,いずれも摩擦なく床を左右にすべり,物体 と斜面との摩擦も無視できるものとする。2 つの斜面台が静止した状態から,左側の斜面台の高さ の位置に,質量 の物体 を静かに置くと,物体 は右に移動し,右側の斜面台を登る。このとき物体 は,右側の斜面台を最大でどの高さまで登るか。その高さ を,導出過程も含めて答えよ。なお,物体 は右側の斜面台と接する際に,なめらかに登り,力学的エネルギーは保存されるものとする。

(2) 次に,図 3 のような,水平な床の上での,帯電した物体 の磁場中の運動を考える。物体 の大きさは無視できるものとする。なお,図 3 の下の図は,真上から見た図である。鉛直上向きに一様な磁束密度 の磁場の中で,質量 ,電荷 の物体 は,上から見て時計回り,半径 の円運動をしている。電荷 は {キ: (1) 正,(2) ,(3) 負} であり,物体 の速さを とすると,物体 が磁場から受ける力の大きさは [ク] であり,これが向心力の大きさ [ケ] に一致することから, の関係は, [コ] となる。

(3) 図 4 は,図 1 の斜面台と図 3 の水平面上の円運動を組み合わせ,真上から見た図である。(1) の (c) の状態のように,斜面台と床との摩擦も,物体 と斜面との摩擦も無視できる場合を考える。物体 (質量 )を斜面上の高さ の位置に静かに置くと,物体 は斜面台(質量 )からすべり落ちたのち,速さ の水平運動をおこない,斜面台は反対の向きに一定の速さ の水平運動をおこなった。タイミングをうまく調整した結果,斜面台からすべり出た物体 が,速さ で円運動中の物体 (質量 )と点 で正面衝突した。なお,磁場は,鉛直上向きに,十分広範囲に一様にかかっているものとする。以下,条件が異なる (a), (b) の場合について考える。

(a) 物体 と物体 が弾性衝突したのち,それぞれ,衝突直前と 反対の向きにはね返った場合を考える。衝突直後の物体 の速さを ,物体 の速さを とする。なお,斜面台および物体 の電荷は常に であり,衝突過程で物体 の電荷は変化しないものとする。この衝突ののち,物体 は,左に進む斜面台(速さ )に追いついて斜面を最大 の高さまで登り,物体 は半径 [サ](, , で表すこと)の円運動をした。なお,物体 は斜面台と接する際に,なめらかに登り,力学的エネルギーは保存され,また,物体 は,斜面台を飛び越えないものとする。

問 2 衝突直後の物体 の速さ と物体 の速さ を,それぞれ,衝突前の速さ , を用いて表せ。その導出過程も書くこと。

問 3 物体 が斜面を登る高さ を,, , , , を用いて表せ。その導出過程も書くこと。

(b) 物体 と物体 が衝突後合体し物体 となった場合を考える。物体 の大きさは無視できるものとする。このとき衝突直後の物体 の速度は,右向きを正とすると [シ] となる。物体 の運動エネルギーは,衝突直前の物体 と物体 の運動エネルギーの総和の [ス] 倍となる。つまり,衝突前の運動エネルギーと比較して,{セ: (1) 増加,(2) 保存,(3) 半分以上だが減少,(4) 半分より減少} する。

問 4 解答用紙に図 5 を描き写し, の場合の,真上から見た物体 の軌道を図示し,運動の向きを矢印で示せ。なお,解答の際は,右の例(衝突前の物体 の軌道の特徴を表した図)にならって,軌道の特徴がわかるように表すこと。

固定された斜面をすべり落ちる

摩擦のない斜面に沿った加速度は で、向きは斜面下向きです。その鉛直成分は なので、合力の鉛直成分は [ア] です。

斜面に沿って進む距離は です。静止から等加速度で進むので、[イ] となります。

台が固定されているので、力学的エネルギーは物体だけで保存します。 から [ウ] です。

台が動くと運動量が効く

床に摩擦がないので、水平方向には外から力がはたらきません。はじめどちらも静止していたので、水平方向の運動量の和はいつも です。

摩擦があってもこれは変わりません。 から [エ] です。摩擦の熱でエネルギーは減りますが、運動量は減りません。

摩擦がない場合は、これに力学的エネルギーの保存が加わります。 に入れると、[オ] が出ます。

そのときの台の速度は [カ] です。台が動くぶん、物体の速さは固定のときより小さくなります。

向かいの斜面をどこまで登るか

左の台からすべり出た物体は で右へ進みます。ここまでは (c) と同じです。

右の台を登るあいだ、物体と右の台は運動量をやりとりします。いちばん高いところでは 2 つの速度が等しくなるので、 から です。

エネルギーの残りが高さになります。 です。

を入れて整理すると となります。台が軽いほど低くしか登れません。 を大きくすると に近づきます。

磁場の中の円運動

磁場は鉛直上向き、円運動は上から見て時計回りです。円の中心へ向かう力が要るので、速度と磁場から力の向きを決めると、電荷は正でなければなりません。{キ} は「正」です。

磁場から受ける力の大きさは [ク] です。これが向心力 [ケ] と等しくなります。

を解いて [コ] です。速さと半径が比例するので、あとで速さが変われば半径も同じ割合で変わります。

同じ質量の弾性衝突は速度を入れかえる

物体 も物体 も質量は です。同じ質量どうしの正面弾性衝突では、2 つの速度がそっくり入れかわります。

は右へ は点 で左へ で来ています。入れかわるので、衝突後は が左へ が右へ です。つまり で、これが問 2 の答えです。

の半径は速さに比例するので、[サ] です。

が台に追いついて登る高さは、2 つがいちばん近づいたところで速度がそろうことから出ます。相対速度が なので、 が問 3 の答えです。

合体すると半分より減る

合体する場合は運動量だけが保存します。 から [シ] です。

合体後の運動エネルギーは 、前の総和は なので、[ス] です。

これが より大きいか小さいかは、 の比べ合いになります。差は で、 も正なので必ず負です。よって {セ} は「半分より減少」です。

のとき で、向きは右です。合体した は質量 、電荷 なので、半径は になります。

で右向きに動き、上から見て時計回りに回るので、 は円のいちばん上になります。半径 の円が の下側に描かれ、これが問 4 の答えです。衝突前の で左向きだったので円は上側にありました。上下が入れかわります。