I 図 2-1 のように,真空中に直径 ,長さ ,巻数 のソレノイド がある。その中心軸を 軸にとり,原点 をソレノイド の中心となるようにとった。 軸は右向きを正とする。 は より十分に大きい。ソレノイド に右から左に向けて一定の大きさ の直流電流を流す。真空の透磁率(磁気定数)を として以下の設問に答えよ。
(1) 原点 での磁束密度の大きさ を求めよ。
(2) ソレノイド を中央で二分割して左半分 を取り除き,図 2-2 のように,右から左に向けて一定の大きさ の直流電流を流した。このとき,原点 付近の磁力線は図 2-3 のように表される。原点 における磁束密度の大きさ を, を用いて表せ。
II 図 2-4 のように,設問 I(1) での長さ のソレノイド を,中心軸が 軸,左端面中心が原点 となるように固定し,右から左に向けて一定の大きさ の直流電流を流す。さらに,直径 ,巻数 1 の円形コイル を,位置 からソレノイド 内部の位置 まで等速運動させる。円形コイル の中心は常に 軸上にあり,コイル面は 軸に垂直である。 は より十分に小さい。また,円形コイル には紙面の手前側に端子 , がある。その端子間距離は十分に小さく,円形コイル の電気抵抗と自己インダクタンスは無視できる。
(1) 端子 , 間に抵抗値 の電気抵抗を接続し,円形コイル を等速運動させた。円形コイル を貫く磁束が短い時間 の間に だけ変化したとき,円形コイル に流れる電流の大きさ を求めよ。
(2) 円形コイル 全体が磁場から受ける力を とする。 は右向きを正とする。前問 II(1) と同様に端子 , 間に抵抗値 の電気抵抗を接続し,円形コイル を位置 から まで速さ で等速運動させたとき, と の関係を表すグラフの概形として最も適切なものを図 2-5 の(あ)〜(し)から一つ選んで答えよ。
(3) 前問 II(2) において,電気抵抗の抵抗値を から にすると, の大きさの最大値は何倍になるか,理由とともに答えよ。
(4) 図 2-6 に示す素子 1 〜 9 は,抵抗値 の電気抵抗,電気容量 のコンデンサー,ダイオードからなる。ダイオードでは,順方向には抵抗 で電流が流れ,逆方向には流れないものとする。例えば素子 4 においては,紙面下向きには電流が流れ,上向きには流れない。
ソレノイド に流す直流電流の向きを逆にし,左から右に向けて一定の大きさ の直流電流を流した。ここで,円形コイル の端子 , 間に素子 1 〜 9 のうち一つを選んで接続し,円形コイル を位置 から まで速さ で等速運動させる場合を考える。ただし,円形コイル の端子 に素子の端子 を,端子 に素子の端子 を接続するものとする。このとき, と の関係が,設問 II(2) と全く同じになる素子を図 2-6 の素子 1 〜 9 からすべて選び,番号で答えよ。
III 図 2-7 のように,図 2-4 の状態からソレノイド を取り除き,代わりに直径 ,巻数 1 の円形コイル を固定した。円形コイル の中心は原点 に一致し,コイル面は 軸に垂直である。円形コイル に一定の大きさの直流電流を,左から見て反時計回りに流して磁場を作る。円形コイル の端子 , 間に抵抗値 の電気抵抗を接続し,円形コイル を位置 から まで等速運動させる。
円形コイル 全体が磁場から受ける力を とする。 は右向きを正とする。 と の関係を表すグラフの概形を描け。なお, の最大値や最小値,それらをとる の値を示す必要はない。
十分に長いソレノイドの中では、磁束密度は です。単位長さあたりの巻数 に を掛けたもので、これが I(1) の答えです。
次に左半分を取り除きます。もとのソレノイドは、左半分と右半分の 2 つが作る磁場の重ね合わせでした。原点 は 2 つのちょうど境目なので、対称性から、どちらの半分も に同じ大きさの磁束密度を作ります。
よって右半分だけが残れば です。これが I(2) の答えです。図 2-3 の磁力線が端で外へ開いていくのは、ここから先が半分になっていくからです。
コイルの抵抗も自己インダクタンスも無視できるので、回路にあるのは外につないだ だけです。
誘導起電力は で、それを で割れば電流になります。 が II(1) の答えです。
コイル が感じる磁束は、ソレノイドの外ではほとんど 、端で 、中では です。 が進むほど磁束は増えますが、増え方が大きいのは端のまわりだけです。
起電力は磁束の増え方に比例し、電流もそれに比例します。力は電流と磁場の積なので、結局 は磁束の増え方の 2 乗に比例します。だから端から離れると急に小さくなります。
向きはレンツの法則で決まります。誘導電流は磁束が増えるのを妨げるので、コイルは進むのを妨げられます。 は動く向きと逆、つまり左向きでずっと負です。
よってグラフは、 を中心にした下向きの山が 1 つで、両側で に近づく形です。図 2-5 では(く)がこれにあたります。
起電力はコイルの動きと磁場だけで決まるので、外の抵抗を変えても変わりません。変わるのは電流のほうで、 を にすれば電流は になります。
力は電流に比例するので、 の大きさもどこでも になります。最大値も 倍です。これが II(3) の答えです。
言いかえると は に比例します。抵抗を上げるほど電流が減り、動きを妨げる力も弱くなります。
ソレノイドの電流の向きを逆にすると磁場が逆になります。ただし は電流と磁場の積で、どちらも符号が変わるので、 の向きも大きさも II(2) と同じままです。素子 1 の抵抗だけなら、そのまま同じグラフになります。
ここで効くのは、行きのあいだ磁束がずっと増え続けることです。起電力の符号は最後まで変わりません。だからダイオードは、最初から最後まで通すか、最初から最後まで止めるかのどちらかにしかなりません。
素子 4 と素子 5 は、向きの合うほうが抵抗 だけの回路と同じになり、合わないほうは電流が流れず になります。よって片方だけが当てはまります。
コンデンサーの入る素子 2・3・8・9 は外れます。コンデンサーに流れる電流は磁束の増え方そのものではなく、その変わり方で決まるので、電流が起電力に比例しなくなるからです。
素子 6 と素子 7 は、コンデンサーとダイオードが直列になった枝が抵抗と並列に入っています。ダイオードが止める向きなら枝に電流が流れず、抵抗だけの回路と同じになります。よってこちらも片方だけが当てはまります。
まとめると、答えは素子 1 と、素子 4・5 のうち順方向が起電力の向きと合うほう、素子 6・7 のうち順方向が合わないほうの 3 つです。どちらを取るかは、図 2-4 のコイルの巻き方と端子の付き方で決まります。
ソレノイドを外し、原点に 1 巻きの円形コイル を置きます。軸の上の磁束密度は原点で最大で、離れると両側で減っていきます。
コイル を貫く磁束も同じ形になり、原点で最大です。山の頂上では磁束の増え方が なので、起電力も電流も力も になります。
原点の手前では磁束が増え、原点を過ぎると減ります。どちらでもレンツの法則がはたらき、力は動きを妨げる左向きです。増え方の大きさが最大になるのは山の斜面の途中で、そこで が最大になります。
よってグラフは、 で に戻る下向きの山が 2 つ並んだ形です。両端でも に近づきます。前の場面の山が 1 つだったのは、ソレノイドでは磁束が増える一方だったからです。