C4植物とCAM植物(光合成の効率化戦略)|高校生物
C3植物の光合成では、高温・乾燥環境で気孔を閉じると CO₂ が不足し、ルビスコが O₂ と反応して光呼吸が起こる。この非効率性を克服するため、C4植物と CAM植物は独自の炭素濃縮メカニズムを進化させた。
光呼吸の問題
ルビスコは CO₂ だけでなく O₂ とも結合する性質をもつ。O₂ と反応すると、RuBP は 3PG とホスホグリコール酸に分解される。ホスホグリコール酸の処理過程で CO₂ が放出されるため、せっかく固定した炭素の一部が失われてしまう。
| 光呼吸の原因 | ルビスコの O₂ との反応 |
| 発生条件 | 高温・強光・低 CO₂ 環境 |
| 結果 | 固定炭素の約25%が失われる |
| C3植物での影響 | 光合成効率が大幅に低下 |
気温が上昇すると、水への CO₂ の溶解度が下がる一方で O₂ の溶解度は相対的に高くなる。さらにルビスコ自体も高温では O₂ との親和性が増すため、光呼吸が促進されやすい。
C4植物の戦略
C4植物は、CO₂ の初期固定とカルビン・ベンソン回路を異なる細胞で行うことで、光呼吸を抑制している。葉の構造も C3植物とは異なり、維管束鞘細胞が発達した「クランツ構造」をもつ。
CO₂ は PEP カルボキシラーゼによってホスホエノールピルビン酸(PEP)と結合し、オキサロ酢酸(C4化合物)になる。これがリンゴ酸に変換されて維管束鞘細胞へ輸送される。
リンゴ酸から CO₂ が遊離し、高濃度の CO₂ 環境でカルビン・ベンソン回路が進行する。残ったピルビン酸は葉肉細胞に戻り、ATP を消費して PEP に再生される。
PEP カルボキシラーゼはルビスコと異なり、O₂ とは反応しない。また CO₂ との親和性がルビスコより約60倍高いため、低濃度の CO₂ でも効率よく固定できる。
C4植物の炭素固定経路を図式化すると次のようになる。
葉肉細胞で PEP + CO₂ → オキサロ酢酸(C4)
オキサロ酢酸がリンゴ酸に変換され維管束鞘細胞へ移動
維管束鞘細胞でリンゴ酸 → ピルビン酸 + CO₂
高濃度 CO₂ 環境でカルビン・ベンソン回路が効率よく進行
C4植物の代表例としては、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、ススキなどがある。これらは熱帯や亜熱帯の草原に多く分布している。
CAM植物の戦略
CAM植物(ベンケイソウ型有機酸代謝植物)は、CO₂ の取り込みとカルビン・ベンソン回路を時間的に分離することで、水分の損失を最小限に抑えている。
空間的分離。葉肉細胞と維管束鞘細胞という異なる場所で反応を行う。
時間的分離。夜間と昼間という異なる時間帯で反応を行う。
CAM植物の1日の代謝サイクルは以下のように進む。
夜間は気温が低く湿度が高いため、気孔を開いても水分の蒸散が少ない。この時間帯に CO₂ を取り込み、PEP カルボキシラーゼによってオキサロ酢酸を経てリンゴ酸に固定する。リンゴ酸は液胞に蓄積される。
昼間は気孔を閉じて水分の損失を防ぐ。液胞からリンゴ酸を取り出し、CO₂ を遊離させてカルビン・ベンソン回路に供給する。光化学反応で ATP と NADPH が生成されるため、カルビン回路は昼間に進行する。
| 時間帯 | 気孔 | 主な反応 |
|---|---|---|
| 夜間 | 開 | CO₂ 固定(C4経路)、リンゴ酸蓄積 |
| 昼間 | 閉 | リンゴ酸分解、カルビン回路 |
CAM植物の代表例には、サボテン、パイナップル、ベンケイソウ、リュウゼツランなどがある。いずれも砂漠や乾燥地帯に適応した植物だ。
3つの光合成タイプの比較
C3・C4・CAM それぞれの特徴を整理しておこう。
| 項目 | C3植物 | C4植物 | CAM植物 |
|---|---|---|---|
| 初期固定酵素 | ルビスコ | PEPカルボキシラーゼ | PEPカルボキシラーゼ |
| 初期固定産物 | 3PG(C3) | オキサロ酢酸(C4) | オキサロ酢酸(C4) |
| 分離方式 | なし | 空間的(細胞間) | 時間的(昼夜) |
C4植物は PEP の再生に余分な ATP を消費するため、低温・弱光環境では C3植物より不利になる。CAM植物は CO₂ の固定速度が遅いため成長が緩やかだが、極度の乾燥環境では圧倒的に有利となる。
生態学的意義
地球上の植物種の約85%は C3植物であり、温帯や冷涼な地域に広く分布する。C4植物は約3%に過ぎないが、熱帯草原の優占種となっており、世界の一次生産量の約25%を担っている。
気候変動による気温上昇や CO₂ 濃度の変化は、これら3タイプの植物の分布や生産性に影響を与える可能性がある。CO₂ 濃度が上昇すると C3植物の光呼吸が抑制され、C4植物との競争関係が変化するかもしれない。