塩化水素 HCl を水に溶かすと、分子が H⁺ と Cl⁻ に分かれます。これを電離といいます。
図の粒を見てください。水に入れた瞬間に、分子の形をしたものが 1 つも残っていません。入れた数だけ H⁺ が出ています。
酸の性質は、この出てきた H⁺ が持っています。青いリトマス紙を赤にするのも、金属を溶かすのも、H⁺ の仕事です。
塩酸・硫酸・硝酸のような酸を強酸といいます。水に入れると、ほぼ 100 % が電離します。
図では、入れた 10 個の HCl から H⁺ が 10 個出ています。分子のまま残るものはありません。
だから強酸では、酸の濃度がそのまま H⁺ の濃度になります。0.1 mol/L の塩酸なら、[H⁺] も 0.1 mol/L です。
酢酸 CH₃COOH は、水に入れてもほとんどが分子のままです。0.1 mol/L の酢酸で電離しているのは 100 個に 1 個ほどです。
図の矢印が両向きなのは、分かれたものがまた戻るからです。分かれる速さと戻る速さが釣り合ったところで、電離した数はそれ以上増えなくなります。
このような酸を弱酸といいます。弱いというのは、水に溶ける量が少ないという意味でも、危なくないという意味でもありません。溶けたもののうち、H⁺ を手放すものが少ないという意味です。
溶かした酸のうち、電離したものの割合を電離度 α といいます。強酸では α はほぼ 1、0.1 mol/L の酢酸では α は 0.013 ほどです。
電離度は濃度で変わるので、酸の強さそのものを表す数にはなりません。そこで使うのが電離定数 Ka = [H⁺][A⁻]/[HA] です。これは濃度を変えても動かない、その酸に固有の値です。
Ka が大きいほど強い酸です。塩酸の Ka は 10⁶ ほど、酢酸は 1.8×10⁻⁵ で、11 桁も違います。この桁の差が、そのまま強い酸と弱い酸の違いです。