中和熱とは(強酸と強塩基で 56 kJ/mol になる理由)

中和すると熱が出る

塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を注ぐと、液の温度が上がります。中和は熱を出す反応です。

温度計を差したまま注いでみると、注いだそばから目盛りが上がっていきます。外から温めているわけではないので、熱は反応そのものから出ています。

酸と塩基が中和するときに出る熱を中和熱といいます。水が 1 mol できるぶんの熱として表します。

どの組み合わせでも 56 kJ/mol

塩酸と水酸化ナトリウムで測ると、中和熱は 56 kJ/mol です。

では硝酸と水酸化カリウムならどうでしょうか。硫酸と水酸化ナトリウムでは。どれで測っても、やはり 56 kJ/mol になります。

酸を変えても塩基を変えても、出てくる熱が同じです。図の棒の高さがどれもそろっています。これは偶然ではありません。

起きている反応が同じだから

強酸も強塩基も、水の中では完全に電離しています。塩酸のビーカーにあるのは H⁺ と Cl⁻、硝酸のビーカーにあるのは H⁺ と NO₃⁻ です。陰イオンが違うだけで、H⁺ は同じ H⁺ です。

混ぜたときに起きているのは H⁺ + OH⁻ ⟶ H₂O だけでした。対イオンは反応に加わりません。

同じ反応が起きているのだから、出る熱が同じなのは当たり前のことです。中和熱がいつも 56 kJ/mol になるという事実そのものが、中和の本質が H⁺ + OH⁻ ⟶ H₂O であることの証拠になっています。

弱酸だと中和熱は小さくなる

酢酸で同じことをすると、中和熱は 56 より小さく、55 kJ/mol ほどになります。

酢酸はほとんどが分子のままなので、中和するにはまず電離しなければなりません。分子から H⁺ を引きはがすには熱が要ります。その熱を、中和で出た熱の中から使ってしまいます。

出た熱から使った熱を引いた残りが、外へ出てきます。弱い酸ほど電離に熱が要るので、そのぶん中和熱は小さくなります。中和熱を測ると、その酸が強いか弱いかが分かる、ということでもあります。