中和のあとに残るのが塩です。酸から来た陰イオンと、塩基から来た陽イオンが組になったものです。
塩酸と水酸化ナトリウムからは NaCl、酢酸と水酸化ナトリウムからは CH₃COONa、塩酸とアンモニアからは NH₄Cl ができます。
塩という字が付きますが、食塩のことではありません。中和でできる物質のまとまりを指す言葉です。
NaCl を水に溶かすと、Na⁺ と Cl⁻ に分かれます。この 2 つは水と反応しません。
Cl⁻ が水から H⁺ を奪って HCl に戻ることは起きません。塩酸は強酸で、H⁺ を手放したがる物質だからです。一度出した H⁺ を、Cl⁻ が拾い直すことはありません。
水はもとのまま釣り合っているので、液は中性のままです。食塩水の pH が 7 なのはこのためです。
CH₃COONa を水に溶かすと CH₃COO⁻ と Na⁺ に分かれます。ここで CH₃COO⁻ は、こんどは水から H⁺ を奪い返します。
CH₃COO⁻ + H₂O ⟶ CH₃COOH + OH⁻ です。酢酸は弱酸で、H⁺ を手放したがらない物質でした。だから離れた H⁺ を見つけると、また拾って分子の形に戻ろうとします。
H⁺ を奪われた水には OH⁻ が残ります。その OH⁻ のぶんだけ液は塩基性に傾きます。この反応を塩の加水分解といいます。
NH₄Cl を水に溶かすと NH₄⁺ と Cl⁻ に分かれます。こんどは NH₄⁺ のほうが H⁺ を手放します。
NH₄⁺ ⟶ NH₃ + H⁺ です。アンモニアは弱塩基で、H⁺ をしっかり抱えていられません。手放された H⁺ のぶんだけ液は酸性に傾きます。
まとめると、弱いほうの性質が残ります。弱酸から来た陰イオンは塩基性に、弱塩基から来た陽イオンは酸性に傾けます。どちらも強ければ何も起こらず中性です。中和したのだから中性になるはず、とはならないのは、このためです。