緩衝能とは(β の意味と pKa ± 1 という目安)

緩衝能は pH を 1 動かすのに要る酸の量

どれだけ pH を保てるかを表す数を緩衝能 β といいます。その液の pH を 1 だけ動かすのに、酸か塩基を何 mol 加えなければならないか、という量です。

たくさん加えないと動かない液ほど、緩衝能が大きいことになります。単位は mol L⁻¹ pH⁻¹ で、このツールでは mmol L⁻¹ pH⁻¹ で出しています。

図の左と右で、同じ量の酸を落としています。緩衝能の大きい液では印がわずかしか動かず、小さい液では大きく飛びます。

pKa ちょうどで緩衝能は最大になる

図の曲線は、酢酸の緩衝液の緩衝能を pH ごとに描いたものです。山の頂上が pKa の 4.76 に来ています。

頂上に来る理由は、そこで HA と A⁻ が半々だからです。酸が来れば A⁻ が受け取り、塩基が来れば HA が渡す。どちらの手も同じだけ用意できているのが、この点です。

ここから離れると、どちらか片方の在庫が減っていきます。在庫の少ないほうの手は、すぐに使い果たされます。

pKa ± 1 を外れると急に落ちる

pKa から 1 離れたところでは、HA と A⁻ の比が 10 対 1 です。少ないほうもまだ 1 割あるので、緩衝能は頂上の 3 分の 1 ほどを保ちます。

2 離れると比は 100 対 1 になり、少ないほうは 1 % しか残りません。緩衝能は頂上の 25 分の 1 ほどまで落ちます。1 離れるあいだの落ち方とは、けたが違います。図の白い帯が pKa ± 1 の範囲で、その外側で曲線が谷底へ向かっているのが見えます。

使えるのは pKa ± 1 まで、というのはこの形から来ています。境目に理屈のある線が引かれているわけではなく、そのあたりから急に頼りなくなる、という目安です。

だから目標の pH に近い pKa の系を選ぶ

緩衝液を作るときにまず決めるのは、濃度でも量でもなく、どの系を使うかです。目標の pH の近くに pKa がある系を選びます。

pH 7.4 の液を作りたいなら、pKa 7.20 のリン酸か 7.48 の HEPES です。同じリン酸でも 1 段目の pKa は 2.15 なので、そちらは使えません。

このツールの緩衝系のパネルには、目標の pH に適する系が近い順に並びます。数字はその系のいちばん近い実効 pKa までの隔たりで、1 を超えるものは並びません。その外に出る組み合わせを選ぶと、断り書きが出るようにしてあります。