塩酸には H⁺ と Cl⁻ が、水酸化ナトリウム水溶液には Na⁺ と OH⁻ があります。混ぜると、1 つのビーカーに 4 種類のイオンが入ることになります。
図の粒がそれです。この 4 つのうち、どれとどれが反応するのかを見ていきます。
混ぜた瞬間は、まだ何も起きていない状態です。4 種類が同じ液の中を漂っているだけです。
H⁺ と OH⁻ が出会うと、その場で水になります。H⁺ + OH⁻ ⟶ H₂O です。この反応はとても起こりやすく、出会えばほぼ必ず起こります。
では Na⁺ と Cl⁻ はどうでしょうか。出会っても何も起こりません。どちらもすでに安定したイオンで、水の中では互いに離れたまま漂っています。
図で消えていくのは H⁺ と OH⁻ の組だけです。Na⁺ と Cl⁻ の数は、はじめから終わりまで 1 つも変わりません。
この反応を式で書くと HCl + NaOH ⟶ NaCl + H₂O です。これを、水に溶けている姿のまま書き直してみます。
左辺は H⁺ + Cl⁻ + Na⁺ + OH⁻、右辺は Na⁺ + Cl⁻ + H₂O です。Na⁺ と Cl⁻ が両辺に同じ数だけ出てきています。
両辺にあるものは消せます。消すと H⁺ + OH⁻ ⟶ H₂O だけが残ります。これが中和のイオン反応式で、中和の本質です。どんな酸とどんな塩基を混ぜても、中央で起きているのはこの 1 本です。
反応せずに残った Na⁺ と Cl⁻ は、水の中を漂ったままです。見た目には何も入っていない透明な液ですが、イオンとしてそこにいます。
水を蒸発させると、この 2 つが集まって塩化ナトリウム NaCl の結晶になります。食塩です。
酸の陰イオンと塩基の陽イオンから作られるこのような物質を塩といいます。中和は、水ができる反応であると同時に、塩ができる反応でもあります。