緩衝液のしくみ(共役酸と共役塩基が H⁺ と OH⁻ を受け止める)

純水に酸を 1 滴落とすと pH は一気に動く

純水の pH は 7 で、[H⁺] は 10⁻⁷ mol/L しかありません。もともと入っている H⁺ がこれだけ少ないので、少し足しただけで割合が大きく変わります。

1 L の純水に 0.001 mol の塩酸を落とすと、[H⁺] は 10⁻³ mol/L になります。pH は 7 から 3 へ、4 も下がります。H⁺ の数では 1000 倍です。

図の帯の印がそれです。ほんのわずかな酸で、端まで飛んでいきます。生き物の体も、化学の実験も、これでは困ります。

緩衝液には酸と共役塩基が両方いる

緩衝液は、弱酸 HA と、そこから H⁺ が外れた形の A⁻ を、どちらもたっぷり溶かした液です。この 2 つを共役酸と共役塩基といい、対にして共役対と呼びます。

酢酸なら、酢酸 CH₃COOH と酢酸ナトリウム CH₃COONa を混ぜて作ります。酢酸ナトリウムは水に溶けて CH₃COO⁻ を出すので、これが A⁻ の役をします。

図では、この 2 つが同じくらいの数ずつ並んでいます。どちらも 0.1 mol/L あるとすれば、純水の H⁺ の 100 万倍の数が控えていることになります。

入れた H⁺ は A⁻ が受け取る

ここへ酸を落とすと、入ってきた H⁺ は A⁻ に捕まって HA になります。H⁺ + A⁻ ⟶ HA という向きに進みます。

入れた H⁺ は液の中を漂わずに、A⁻ の在庫に吸い込まれて消えます。減るのは A⁻ の数、増えるのは HA の数で、遊んでいる H⁺ の数はほとんど変わりません。

図の左の帯を見てください。棒の境目が少し動くだけで、下の pH の印はほとんど動きません。

入れた OH⁻ は HA が打ち消す

塩基を落としたときは逆です。HA が H⁺ を手放して OH⁻ と水になります。HA + OH⁻ ⟶ A⁻ + H₂O です。

こんども減るのは HA の数、増えるのは A⁻ の数で、[H⁺] そのものはほとんど動きません。酸が来ても塩基が来ても受け止められるのは、受け手と出し手の両方を最初から用意してあるからです。

これが緩衝作用です。緩衝液が pH を保てるのは、H⁺ を作らないからではなく、外から来た H⁺ と OH⁻ を在庫の付け替えに変えてしまうからです。