シャボン玉の膜や、水に浮いた油の膜のように、薄い膜に光を当てます。膜の上の面に着いた光は、そこで全部返るわけでも全部入るわけでもなく、返る光と入る光に分かれます。
膜に入った光は下の面へ進み、そこでもまた分かれます。返ったぶんは上へ戻り、もう一度上の面を通って外へ出てきます。目に届くのは、上の面で返った光と、この往復して出てきた光の 2 つです。
2 つはもともと同じ 1 本の光で、同じ波源から出た同じ波です。位相の関係がいつまでも保たれるので、重なれば干渉します。別々の電球を 2 つ並べても干渉しないのは、この関係がないからです。
しかも 2 つは平行に進みます。目やレンズはこれを 1 点に集めるので、重なった結果が明るさとして見えます。違うのは、往復したほうが遅れて出てくることだけです。
どれだけ遅れるかを測ります。出ていく 2 本は平行なので、片方から相手へ垂線を下ろすと、そこから先は同じ距離です。比べるのはその手前までで済みます。
膜の中を往復する道のりは です。ただし膜の中では光の波長が になるので、同じ長さでも波の数は 倍あります。距離に屈折率を掛けたものが波の数に比例する量で、これを光路長といいます。
そのあいだに、上の面で返ったほうも外を少し進んでいます。垂線の足までの長さが で、これは引かなければいけません。差を計算すると、きれいに整理されて だけが残ります。
図で角を振ってみてください。寝かせて当てるほど膜の中の道のりは長くなりますが、外の光もそのぶん進むので、差し引きでは光路差は縮みます。 が小さくなるとおりです。垂直に当てるときは なので、光路差はちょうど になります。
薄膜がややこしいと言われるのは、道のりのほかにもう一つ効くものがあるからです。反射したときに、波が裏返ることがあります。
屈折率の小さい側から大きい側へ向かって当たった波は、返るときに上下が裏返ります。位相が半波長ぶんずれる、ということです。弦の波でいえば固定端反射と同じで、山が谷になって返ります。図の上の段がこれです。
逆に、大きい側から小さい側へ向かって当たった波は裏返らずにそのまま返ります。自由端反射と同じで、山は山のまま返ります。図の下の段がこれです。
薄膜では、上の面が空気から膜へ向かう反射なので裏返り、下の面は膜から空気へ向かう反射なので裏返りません。2 つのうち片方だけがずれるので、この半波長は消えずに残ります。
道のりの差と、反射での半波長のずれを合わせます。光路差が波長の整数倍のときは、半波長のずれが残るので打ち消し合って暗くなります。半波長ぶんずれているときに、そのずれと打ち消し合ってちょうどそろい、明るくなります。
式にすると、強め合うのは 、弱め合うのは です。ふつうの干渉と条件が入れ替わっているのは、半波長のずれのぶんです。
白色光はいろいろな波長の集まりです。膜の厚さが決まっていても、強め合う波長と弱め合う波長があります。図は 3 つの波長について、厚さを左から右へ増やしたときの明暗を並べたものです。明るい所の間隔が波長ごとに違うので、同じ厚さでも明るい色と暗い色が分かれます。
シャボン玉の膜には厚さのむらがあります。むらがそのまま色のむらになって、あの模様が見えます。傾けると色が変わるのは が変わって光路差がずれるからで、膜が薄くなって割れる直前に黒く見えるのは、光路差が 0 に近づいて半波長のずれだけが残り、どの波長も打ち消し合うからです。