回折格子は、等間隔にすきまをたくさん並べた板です。ガラスに細かい溝を刻んで作ります。ヤングの実験のすきまが 2 本だったところを、何千本にも増やしたものだと思ってください。
左から平面波を当てると、すべてのすきまが同時に、同じタイミングで波を出しはじめます。すきまはどれも同じ 1 枚の波面から光を受け取るので、これは自動的にそろいます。
ある向きへ進む光を考えます。となり合う 2 つのすきまから出た光の経路差は、ヤングの実験のときとまったく同じ図で出せます。図の太い部分がそれで、間隔と角だけで決まります。
ここが格子のうまいところです。すきまが等間隔なので、どの 2 つを選んでも経路差は同じになります。ですから、となり合う 2 つがそろいさえすれば、残り全部も自動的にそろいます。
図では、それぞれの光線の上に波の山を波長ごとに打ちました。となり合う光線の山が一直線に並ぶとき、どのすきまから来た光も同じタイミングで届いています。そこが強め合う向きです。
並ぶのは、経路差がちょうど波長の整数倍のときです。式にすれば で、ヤングの実験と同じ形です。すきまが 2 本でも千本でも、この式は変わりません。
角を振ってみてください。そろう向きが何度もやってきます。そのたびに山を明るく塗り替えています。この向きに現れる明るい線を主極大といいます。
注意したいのは、 がとなり合うすきまの間隔だということです。板の端から端までの長さではありません。格子では 1 ミリあたりの本数で示されることが多いので、その逆数が になります。
では、すきまを増やすと何が変わるのか。主極大の出る向きは変わりません。決めているのは間隔と波長だけだからです。変わるのは線の細さです。
図は横軸を向き、縦軸を明るさにしたグラフです。上がすきま 2 本、下が多数のときで、山の位置はぴたりと同じなのに、太さがまるで違います。
なぜ細くなるのか。すきまが 2 本なら、少し向きがずれても打ち消し合うのは 1 組だけなので、明るさはゆっくりしか減りません。ところが多数あると、少しのずれでも遠いすきまどうしでは大きなずれになり、全体を足すと打ち消し合ってしまいます。
ですから明るいのは主極大のごく近くだけになり、線が細く鋭くなります。位置を正確に測りたいときは、線が細いほど有利です。分光器に回折格子を使うのは、この鋭さのためです。
強め合う向きは、波長によって違います。 ですから、波長が長いほど大きく曲がります。
まっすぐ進む向きだけは別です。そこは経路差が 0 なので、どの波長もそろいます。だから白色光を当てると、中央だけは白いまま残ります。
1 次から先では波長ごとに向きが分かれ、色の帯になります。図の 3 本の色が、長い波長・中くらい・短い波長です。太陽の光を格子に通すと虹のような帯が並ぶのは、これが理由です。
次数には限りもあります。 は 1 を超えられないので、 までしか出ません。波長が長いほど早く出られなくなり、図でもいちばん長い波長は 2 次が現れていません。