2 つの波が同じ場所に来たとき、そこの媒質はどう動くのか。答えはひとことで済みます。それぞれの波が単独で起こしたはずの変位を、そのまま足すだけです。これを重ね合わせの原理といい、式に書けば です。
図の破線がもとの 2 つの波、実線が足し合わせた合成波です。重なっていない所では、実線は破線にぴったり重なっています。足す相手が 0 だからで、何も特別なことは起きていません。
重なった所だけが盛り上がります。山と山が出会えば、高さは 2 つの和になります。振幅が同じなら、そこだけ 2 倍の高さになります。
合成波を描けと言われたら、やることは決まっています。位置を 1 つ決めて、そこでの 2 つの高さを足す。それを何か所かでくり返し、点をつないで滑らかな線にする。それだけです。
図では 3 か所で足し算を積み上げてみました。軸から片方の波までがシアン、そこからもう片方のぶんが琥珀で、いちばん上に打った白い点が合成波の高さです。実線は、この点をすべての位置でつないだものにほかなりません。
手を動かすときは、山と谷、そして波が 0 になる所を先に押さえると速くなります。線の形が変わるのはその近くだけで、あいだは滑らかにつなげば足ります。
こんどは山と谷を出会わせます。ちょうど重なりきった瞬間、合成波はどこも 0 になり、画面から波が消えたように見えます。 です。
しかし波は消えていません。薄い破線は少しあとの合成波で、桃色の矢印はその瞬間に媒質が動いていく向きです。変位が 0 でも、媒質は止まっていません。位置が 0 でも速さが最大になるのは、単振動でも見たとおりです。
波が持っていたものは、その瞬間、変位ではなく媒質の運動として残っています。だから次の瞬間には、また波の形が現れてきます。「重なって消えた」と答えてはいけません。
上の段が実際に見える形、下の段がそのもとになっている 2 つの波です。上は重なるあいだ形を変えますが、下の 2 本は最初から最後まで形も速さも変えません。
これを波の独立性といいます。波どうしはぶつかっても、はね返ることも、混ざることも、止まることもありません。相手がいないかのように、そのまま通り抜けます。
ですから「すれ違ったあとの波形を描け」という問いは、実は何も計算しなくても答えられます。それぞれの波を、何もなかったものとしてそのまま進めた位置に描けばよいのです。
重ね合わせの原理と波の独立性は、このあとずっと効いてきます。定常波は逆向きに進む 2 つの波の重ね合わせですし、干渉は 2 つの波源から来た波の重ね合わせです。足すだけ、という一点をここで固めておいてください。