両性元素(両性金属)はアルミニウム、亜鉛、スズ、鉛の4つです。アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛は「ああすんなり」と覚えます。
これらが「両性」と言われるのは、酸とも塩基とも反応するからです。酸としか反応しないもの、あるいは塩基としか反応しないものは両性とはいいません。また両性元素の酸化物と水酸化物も同様に酸とも塩基とも反応します。
両性元素は典型金属元素で、水酸化物イオンを配位子とする錯イオンを形成します(亜鉛はアンモニアも配位子にできる)。
酸化しやすさ
スズ以外の3つは常温空気中ですぐに錆びます。スズは比較的安定していますが高温になるとすぐに酸化します。
スズ以外の3つは常温空気中において緻密な酸化膜が表面を覆い、内部を保護します。この「緻密な酸化膜が表面を覆い、内部を保護する」という性質は記述問題でしばしば問われる。
両性元素と酸、塩基の反応
すべての反応で水素が発生します。またどの両性元素も塩基との反応は「水」も加わっています。
アルミニウム
2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2↑
2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2↑
亜鉛
Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2↑
Zn + 2NaOH + 2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2↑
両性元素の酸化物・水酸化物と酸・塩基の反応
両性元素は、その酸化物と水酸化物も酸・塩基と反応する。
アルミニウム
Al2O3 + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2O
Al2O3 + 2NaOH + 3H2O → 2Na[Al(OH)4]
Al(OH)3 + 3HCl → AlCl3 + 3H2O
Al(OH)3 + NaOH → Na[Al(OH)4]
亜鉛
ZnO + 2HCl → ZnCl2 + H2O
ZnO + 2NaOH + H2O → Na2[Zn(OH)4]
Zn(OH)2 + 2HCl → ZnCl2 + 2H2O
Zn(OH)2 + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4]
アルミニウム
項目 | 内容 |
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原子番号 | 13 |
周期表 | 3周期13族 |
原子量 | 26.98 |
常温状態 | 固体(銀白色) |
元素区分 | 両性元素・典型金属元素 |
アルミニウムの単体は銀白色の固体で、やわらかく、展性と延性があり、電気をよく伝える。身近にあるアルミ箔を思い出すとわかりやすい。一円玉の原料でもあります。
↑の動画は1億回以上再生されているアルミニウムの動画。おそらく世界で最も閲覧された化学系の動画です。アリの巣に溶かしたアルミニウムを流しています。液体のアルミニウムがバケツから流れている様子が水とはまったく違うふうに映っている。
アルミニウムは濃硝酸に溶けない。アルミニウムは酸化されやすく、表面に緻密な酸化膜ができて、これが内部を保護してしまうからです。この状態を不動態(ふどうたい)といい、入試で最もよく出題される言葉の一つです。必ず覚えましょう。
反応 | 反応式 |
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テルミット反応 | 2Al2 + Fe2O3 → 2Fe + Al2O3 |
融解塩電解 | Al3+ + 3e- → Al |
テルミット反応は鉄の単体を得る反応。アルミニウムの粉末と酸化鉄を一緒に燃焼させると、激しい炎と大量の熱を生じます。テルミット反応によって発生する大量な熱は工事現場などさまざまな場面で使われます。
亜鉛
項目 | 内容 |
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原子番号 | 30 |
周期表 | 4周期12族 |
原子量 | 65.38 |
常温状態 | 固体(青白色) |
元素区分 | 両性元素・典型金属元素 |
亜鉛の関係する反応は上にあげた酸・塩基の反応がほとんど。亜鉛は錯イオンを形成します。
鉛
項目 | 内容 |
---|---|
原子番号 | 82 |
周期表 | 6周期14族 |
原子量 | 207.2 |
常温状態 | 固体(白色) |
元素区分 | 両性元素・典型金属元素 |
鉛が関係する反応は鉛蓄電池(なまりちくでんち)と沈殿の2つがあります。ここでは沈殿のみ扱います。
名称 | 分子式 | 性質(色) |
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水酸化鉛(Ⅱ) | Pb(OH)2 | 沈殿(白) |
塩化鉛(Ⅱ) | PbCl2 | 沈殿(白) |
臭化鉛(Ⅱ) | PbBr2 | 沈殿(白) |
ヨウ化鉛(Ⅱ) | PbI2 | 沈殿(黄) |
硫酸鉛(Ⅱ) | PbSO4 | 沈殿(白) |
クロム酸鉛(Ⅱ) | PbCrO4 | 沈殿(黄) |
硫化鉛(Ⅳ) | PbS | 沈殿(黒) |
酸化鉛(Ⅳ) | PbO2 | 沈殿(褐色) |
鉛に水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると Pb(OH)2 の白色沈殿が生じますが、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと沈殿が溶けます。これはテトラヒドロキシド鉛(Ⅱ)酸イオン(錯イオンのページを参照)を生じるためです。
鉛は過剰の水酸化ナトリウム水溶液に溶けますが、過剰のアンモニア水には溶けません。