つりあっているところへ二酸化窒素を加えます。図では、加えた瞬間に褐色の粒がどっと増えます。
そのあとを見てください。増えた褐色が、少しずつ減っていきます。加えたぶんがそのまま残るのではなく、一部が使われて無色のほうへ移るからです。
加えた変化を打ち消しはしません。加える前より褐色は多いままです。けれども加えたぶんをそのまま残しもしません。この、打ち消しはしないが和らげる、という言い方がルシャトリエの原理です。
和らげる向きは、いつでも「加えたものが減る向き」です。左辺を加えたのだから、左辺が減る向き、つまり右へ動きます。
濃度についてはいま見たとおりです。ある物質を加えると、その物質が使われる側へ寄ります。取り除くと、その物質ができる側へ寄ります。
左辺のものを加えれば右へ、右辺のものを加えれば左へ。左辺のものを取り除けば左へ、右辺のものを取り除けば右へ動きます。
このとき平衡定数は変わりません。動いたのはつりあいの位置だけで、つりあったあとに分数を作り直せば、同じ値に戻ります。
容器を狭めます。中の粒はどれも濃くなり、圧力が上がります。つりあいは、その圧力を下げる向き、つまり気体の分子の数が減る向きへ動きます。
この反応では 2 分子から 1 分子へ減るほうが右です。ですから狭めると無色の四酸化二窒素が増えます。図の線が段になって動きます。
ただし、左辺と右辺で気体の分子の数が同じ反応では、狭めても動きません。減らせる分子の数がないからです。圧力がいつでも効くわけではない、というのはこのことを指しています。
温度を上げます。つりあいは、加えられた熱を減らす向き、つまり熱を吸う向きへ動きます。この反応では正方向が発熱なので、吸熱は逆方向、褐色の二酸化窒素ができる側です。
ここまでの 3 つは、どれも同じ一言で言えます。加えた変化を和らげる向きへ動く。濃度でも圧力でも温度でも、変わりません。
ただし温度だけは、ほかの 2 つと違うところがあります。濃度と圧力はつりあいの位置を動かすだけですが、温度は平衡定数そのものを変えます。そして触媒は、どちらも変えません。速さを上げるだけです。