強磁性をもつ元素は鉄・コバルト・ニッケルの 3 つ|高校化学
強磁性とは、磁石に強く引きつけられ、外から加えた磁場を消したあとも自分が磁石のまま残る性質である。磁石を近づけたときだけ弱く引かれる物質とは、はっきり区別される。
常温で単体のまま強磁性を示す元素は、鉄、コバルト、ニッケルの 3 つしかない。高校化学で覚えるのはこの 3 つ。
強磁性をもつ 3 つの元素
3 つとも遷移元素で、銀白色の金属である。たたけば広がり、電気もよく通す。磁石になる点をのぞけば、ほかの金属と変わらない。
ガドリニウム Gd も強磁性をもつが、磁石でいられるのは 20℃ 付近より下に限られる。室温ではちょうど境目。高校化学では扱わない。
周期表では隣り合っている
3 つの元素は周期表の上に散らばっているのではない。原子番号は 26、27、28 と連続し、どれも第 4 周期。
| 元素 | 原子番号 | 族 |
|---|---|---|
| 鉄 Fe | 26 | 8 族 |
| コバルト Co | 27 | 9 族 |
| ニッケル Ni | 28 | 10 族 |
族は 8、9、10 と 1 つずつずれるだけである。周期表で第 4 周期の中ほどを見れば、3 つは横にならんでいる。
強磁性が現れる背景にあるのは、M 殻の d 軌道で対をつくらずに残る電子である。電子は 1 つ 1 つが小さな磁石にあたり、対になると互いに打ち消し合う。
残った電子の向きが隣の原子どうしでそろうと、全体が一つの大きな磁石としてふるまう。鉄、コバルト、ニッケルで起こるのは、この現象。
磁石につく金属とつかない金属
金属だから磁石につく、と思われがちだが、これは誤り。
鉄、コバルト、ニッケル。この 3 つと、3 つを含む合金や化合物
アルミニウム、銅、金、銀、鉛など。金属光沢があっても磁石には反応しない
アルミニウムの缶と鉄の缶を磁石で分ける仕組みも、この違いの応用である。見た目が似ていても、鉄を含むかどうかで反応が変わる。
鉄くぎを磁石で同じ向きに何度もこすると、くぎ自体が磁石になる。銅線やアルミニウムの板では、いくらこすっても同じことは起こらない。
熱すると磁石でなくなる
強磁性は温度に左右される。ある温度を超えると磁石の性質が消え、磁場を加えたあいだだけかすかに反応する状態へ変わる。
この境目の温度がキュリー点。名前はフランスの物理学者ピエール・キュリーにちなむ。
ニッケルは 354℃ で磁石でなくなる。3 つのなかでは最も熱に弱く、ガスの炎なら十分に届く温度。
鉄は 770℃、コバルトは 1115℃ まで磁石のまま残る。同じ 3 元素でも、熱への強さはこれだけ違う。
キュリー点を超えた物質は常磁性に変わる。磁場を加えたあいだだけわずかに引かれ、磁場を外せばもう磁石ではない。
身の回りの磁石は合金や化合物
売られている磁石は、3 元素の単体そのままではない。多くは合金か化合物である。
アルニコ磁石はアルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄の合金。名前は Al、Ni、Co の頭文字をならべたものである。
フェライト磁石は酸化鉄を主成分とする化合物。安価なので、冷蔵庫に貼る磁石やスピーカーに広く使われている。
ネオジム磁石はネオジム、鉄、ホウ素からなる。最も強力な磁石として知られるが、キュリー点は 320℃と鉄より低く、熱には弱い。
どれも鉄、コバルト、ニッケルのいずれかを含む。3 つの元素を覚える意味はここにある。
確認
常温で単体のまま強磁性を示す元素の組み合わせはどれか。
- 鉄、アルミニウム、銅
- 鉄、コバルト、ニッケル
- 鉄、銀、亜鉛
- 銅、ニッケル、金














強磁性を示すのは鉄、コバルト、ニッケルの 3 つ。原子番号 26、27、28 と続き、周期表では隣り合っている。