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時間の遅れ(時間の膨張)

時間の遅れ(時間の膨張)は、特殊相対性理論の最も有名な予言の1つです。高速で移動する物体の時間は、静止している観測者から見るとゆっくり流れます。

光時計による説明

光時計という思考実験で、時間の遅れを直感的に理解できます。

光時計の構造

2枚の鏡を向かい合わせに置き、その間を光が往復します。光が1往復するのを1「チック」と定義します。

静止した光時計

鏡の間隔を とすると、1チックの時間は です。

移動する光時計

光時計が速度 で横に移動している場合、光は斜めの経路を通ります。ピタゴラスの定理より、光の移動距離は長くなります。

移動する光時計では、光が鏡に到達するまでの経路が長くなります。しかし光速は不変なので、1チックにかかる時間が長くなります。計算すると、

ここで はローレンツ因子と呼ばれます。

ローレンツ因子

ローレンツ因子 は、速度によって次のように変化します。

速度γの値
01.00
0.5c1.15
0.9c2.29
0.99c7.09
0.999c22.4

速度が光速に近づくほど、時間の遅れは劇的に大きくなります。光速の99.9%で移動する宇宙船内の1年は、地球では22年以上に相当します。

固有時間

「固有時間」とは、物体と一緒に移動する観測者が測る時間です。これは物体にとっての「本当の」経過時間であり、常に最も短い値をとります。

固有時間

物体と一緒に移動する座標系での時間。その物体にとって実際に経過する時間。

座標時間

別の慣性系から観測した時間。固有時間より常に長い()。

実験的検証

時間の遅れは多くの実験で確認されています。

ミュオンの寿命延長:宇宙線によって大気上層で生成されるミュオンは、本来なら地表に届く前に崩壊するはずですが、高速で移動しているため寿命が延び、地表でも検出されます。
原子時計の飛行実験:1971年のハーフェレ・キーティング実験では、ジェット機に原子時計を載せて世界一周し、地上の時計との差を測定しました。結果は相対性理論の予測と一致しました。
GPS衛星:GPS衛星の時計は、特殊相対論(速度による遅れ)と一般相対論(重力による進み)の両方の補正が必要です。

時間の遅れは、SF映画でおなじみの「ウラシマ効果」の原因です。高速宇宙旅行から帰還すると、地球では何十年、何百年と経過している可能性があります。