速度の合成則
特殊相対性理論では、速度の足し算が日常の直感とは異なります。ニュートン力学での単純な加算は、光速に近い領域では成り立ちません。
古典的な速度の合成
日常経験では、速度は単純に足し算できます。
電車の例
時速100kmの電車の中で、進行方向に時速10kmで歩くと、地上から見れば時速110kmで移動しています。
数式
しかし、この単純な足し算が成り立つのは、速度が光速に比べて十分に小さい場合だけです。
相対論的な速度の合成則
座標系Sに対して速度 で動く座標系S’があり、S’内で物体が速度 で動いているとします。Sから見た物体の速度 は、
分母の が効いてくるため、結果は単純な足し算より小さくなります。
具体例
| u | v' | 古典的な合成 | 相対論的な合成 |
|---|---|---|---|
| 0.5c | 0.5c | 1.0c | 0.8c |
| 0.9c | 0.9c | 1.8c | 0.994c |
| 0.99c | 0.99c | 1.98c | 0.9999c |
どんなに大きな速度を足し合わせても、結果は必ず光速未満にとどまります。
光速の場合
光を発射した場合を考えてみましょう。 のとき、
発射台がどんな速度で動いていても、光の速度は のままです。これは光速不変の原理と完全に整合しています。
導出
ローレンツ変換から速度の合成則を導出できます。
S’での速度は です。ローレンツ変換の微分から、
これらを割ると、
低速での近似
のとき、分母の は無視できるほど小さくなり、
日常の速度ではニュートン力学の結果が得られます。相対性理論はニュートン力学を否定するのではなく、その拡張なのです。
ラピディティ
速度の合成が複雑になるのは、速度という量自体が相対論的には扱いにくいためです。「ラピディティ」 を で定義すると、
と単純な足し算になります。ラピディティは、ミンコフスキー時空における「角度」に対応しています。












