測地線と自由落下
測地線は、曲がった時空における「最も自然な経路」です。一般相対性理論では、重力を受けて運動する物体は測地線に沿って進みます。自由落下とは、まさにこの測地線運動のことです。
測地線とは
平坦な空間での直線は、2点間の最短経路です。曲がった空間での測地線は、この概念を一般化したものです。
直線が最短経路
大円が最短経路(測地線)。例えば地球上の飛行機の経路。
時空では、測地線は固有時間を最大化(または極値化)する経路です。
測地線方程式
測地線は次の微分方程式で記述されます。
第1項は通常の加速度、第2項(クリストッフェル記号を含む)が時空の曲がりによる効果です。
平坦な時空では なので、 となり、等速直線運動になります。
自由落下の再解釈
ニュートン力学では、りんごが落ちるのは地球が引力を及ぼすからです。一般相対性理論では、見方が根本的に変わります。
りんごは重力という「力」を受けて加速落下する。床の上に置かれたりんごは、重力と垂直抗力が釣り合って静止している。
りんごは曲がった時空の測地線に沿って自由に運動している。床の上のりんごは、床から力を受けて測地線から逸れている(つまり加速している)。
驚くべきことに、自由落下する物体は「力を受けていない」のであり、床に静止している物体こそが「加速している」のです。
弱重力場での近似
地球表面のような弱い重力場では、測地線方程式はニュートンの運動方程式に帰着します。
時間方向の測地線方程式から、
ここで は重力ポテンシャルです。これはまさに というニュートン力学の式です。
光の測地線
質量のない光子も測地線に沿って進みます。ただし、光子の測地線は「ヌル測地線」と呼ばれ、
を満たします。
時間的測地線()を進む。固有時間が経過する。
ヌル測地線()を進む。固有時間は経過しない。
軌道運動
惑星が太陽の周りを回るのも測地線運動です。ただし、ニュートン力学とわずかに異なる結果になります。
水星が太陽の周りを公転
曲がった時空の測地線を進む
楕円軌道が少しずつ回転(近日点移動)
100年で約43秒角(ニュートン力学では説明できない)
この水星の近日点移動は、一般相対性理論の最初の実験的証拠となりました。
自由落下と測地線の概念は、重力を「力」ではなく「幾何学」として理解する鍵です。












