クーロンの法則と静電気力(万有引力との比較)
下じきで髪をこすると、髪が持ち上がります。地球全体が下へ引いているのに、こすった下じき 1 枚のほうが勝つ。
同じ 2 つを同じ場所で比べると、どれくらい差があるのか。まず電気の力を書きます。電荷 と を距離 だけ離したときの大きさです。
はクーロン定数で 。真空の誘電率を使って とも書けます。
形は万有引力とそっくり
積を距離の 2 乗で割る、というところまで同じです。違いは 2 か所。
。質量に負の値がないため、いつでも引力になる
。電荷には符号があり、引力にも斥力にもなる
もう 1 つの違いが強さです。同じ距離に置いた陽子と電子で比べると、電気の力は重力のおよそ 倍になります。

桁が も離れています。原子の中の計算で重力を書かないのは、書いても答えが変わらないからです。
符号が向きを決める
同符号なら反発し、異符号なら引き合います。大きさの式に絶対値がついているのは、向きを符号ではなく配置の図から読むためです。

計算では大きさを絶対値で求め、向きは配置から決めます。符号をそのまま代入して負の力が出た、という扱いが通るのは 1 次元の問題だけです。
距離が 2 乗で効く
距離を 2 倍にすれば 4 分の 1、3 倍にすれば 9 分の 1 になります。電荷を減らすより、離すほうが速く効く。

電荷は飛び飛びの値をとる
電子 1 個が持つ電荷の大きさを電気素量と呼びます。
すべての電荷はこの の整数倍です。 でも 個ぶんにあたるため、日常の範囲では連続した量に見える。
という単位は、身のまわりの静電気にくらべてとてつもなく大きい量です。こすった下じきに集まる電荷は ほど。
ずつを 離して置くと、はたらく力は 。 万トンの物体にはたらく重力を超える。
2019 年に、決める側と測る側がいれかわった
上に書いた電気素量の値には、桁が最後まで並んでいて誤差がついていません。 年に単位の決め方が変わり、 が定義値になったためです[2]。
いまは の値を決めておいて、そこからアンペアを定める形になっています。かわりに真空の誘電率のほうが測定値になり、 に ほどの相対的な不確かさがつく[2]。
高校の計算では と で足ります。どちらが決めた値でどちらが測った値かは、桁の並びに出ています。
3 つ以上あるとき
電荷が 3 つ以上あるときは、ペアごとにクーロンの法則をあて、最後にベクトルとして足します。ほかの電荷がそばにあっても、あるペアにはたらく力は変わりません。

例:符号の違う 2 電荷
と を 離します。
符号が違うため引力です。数マイクロクーロンでも 、 ほどの物体を持ち上げるだけの大きさです。
例:距離を 3 倍にする
前の例の距離を へ広げます。 なので 9 分の 1。
電荷のほうを 3 分の 1 にしても にしかなりません。同じ「3 分の 1」でも、効き方が違います。
例:水素原子で 2 つの力を比べる
陽子と電子が 離れているとします。まず電気の力。
同じ配置で万有引力を求めます。、。
比をとると 倍。分母と分子で が同じだから、距離を変えても比は動きません。
例:正三角形の 3 電荷
1 辺 の正三角形の頂点に、 を 3 個置きます。1 個が受ける合力を求めます。
まず 1 対 1 の力から。
2 本の力は をなします。左右の成分が打ち消し、外向きの成分だけが残る。
対称性を使うと、成分を 1 つずつ書かずに済みます。
例:力がつり合う点
に 、 に を置きます。この直線上で、置いた電荷が力を受けない点はどこでしょうか。
2 つの電荷のあいだにあるはずです。 から の点で、両側からの力が等しくなる条件を書きます。
整理すると 、つまり です。
大きいほうの電荷から遠い位置になりました。距離の比が で、 から力の比が 。電荷の比 とかけ合わせてつり合います。
例:クーロンがどう測ったか
この式は 年に、細い糸で棒をつるしたねじり秤で確かめられました[1]。同じ符号に帯電させた小球どうしを近づけると、反発して糸がねじれる。
ねじれ角から力を読みとる仕組みで、糸が細いほど小さな力まで測れます。距離を変えながらねじれ角を記録すると、 が浮かび上がった。
細い糸で棒をつるす
帯電させた小球を近づけて反発させる
糸のねじれ角から力の大きさを読む
2 つの点電荷のあいだの距離を半分にし、片方の電荷を 3 倍にしました。力は何倍になりますか。
- 6 倍
- 12 倍
- 1.5 倍
水素原子の陽子と電子の距離を 2 倍にすると、電気の力と万有引力の比はどうなりますか。
- 変わらない
- 半分になる
- 4 分の 1 になる
どちらの力も で落ちるため、比をとると が約分されて消えます。距離をどう変えても 倍のまま。半分や 4 分の 1 という答えは、片方だけが距離で変わると見た場合のものです。
電場も電位も、この式を割ったり積んだりして作られています。形の似ている万有引力と並べておくと、符号があること、桁が違うこと、その 2 つが後ろまで効いてきます。

















距離が半分になると 1/r2 から 4 倍、電荷が 3 倍で 3 倍。かけ合わせて 12 倍です。6 倍という答えは、距離の効き方を 2 乗ではなく 1 乗と見た場合のものになります。