導体と不導体の違いと静電誘導・誘電分極
静電気的につり合った導体の内部では、電場がちょうど になります[1]。近くにどれだけ強い電場があっても、中まで入ってきません。
不導体では になりません。弱まるだけで、残ります。この差は、電子が動けるかどうかから出ています。
自由電子が打ち消す
金属には自由に動ける電子があります。外から電場をかけると、電子が力を受けて動く。
移動した電子は片側に集まり、反対側には正の電荷が残ります。この 2 つが内部に逆向きの電場をつくり、外の電場を打ち消していく。
打ち消しが完全になるまで電子は動き続けます。止まるのは、内部の電場がちょうど になったとき。だから静止した状態では必ず です[2]。
電荷は表面にしか残れない
導体の内部に、表面をふくまないガウス面をとります。内部の電場が なので、面を貫く量も 。
囲んだ電荷が という結論になります[2]。面はどんな形でも、どこにとってもよいので、内部のどこにも電荷はありません。
与えた電荷はすべて表面に出ます。同符号の電荷どうしが反発して、行けるところまで行った結果とも読めます。
表面のすぐ外は
導体の表面のすぐ外側では、電場が面に垂直で、大きさは面電荷密度で決まります[1]。
導出は、表面をはさむ薄い円筒です。内側のふたは導体のなかにあるので 、側面は電場と平行で寄与しません。外側のふただけが残る。
薄い帯電板の と混ざりやすいところ。導体では内側へ出る電場がないので、外側だけに 倍が寄ります。
電場が表面に垂直になるのは、平行な成分があると電子が動いてしまうためです。動かなくなった状態が静電気的なつり合い。
表面に沿った成分が残っているかぎり、電子はその向きへ流れ続ける。止まったということは、その成分が消えたということ。
不導体は弱めるだけ
不導体では電子が原子から離れられません。動くのは向きだけで、分子が電場の向きにそろいます。
そろった結果、表面に電荷が現れます。この電荷が元の電場を打ち消す向きにはたらくので、内部の電場は弱まる。
は比誘電率で、 より大きい値です[3]。 が有限なので、割っても にはなりません。導体は が無限大の極限にあたる、という見方もできます。

静電遮蔽
導体で囲むと、その内側は外の電場から守られます[2]。囲いのなかに電荷がなければ、空洞のなかの電場も 。
雷が落ちても車のなかが安全なのは、この効果です。電流は金属の車体を通って地面へ流れ、なかには入ってきません。
同軸ケーブルの外側の網も同じ役割をしています。信号を外へもらさず、外からの雑音も入れない。
とがったところに集まる
導体の表面で電荷は一様には並びません。曲率の大きい、とがった場所ほど密に集まります。
なので、そこでは電場も強くなる。空気が絶縁を保てなくなると放電が起きます。避雷針の先がとがっているのは、この集まりを利用するためです。
例 1:帯電した導体球
半径 の金属球に を与えます。内部の電場は です。
外側の では、中心に点電荷があるのと同じになります。
表面ちょうどでは 。表面をまたいだところで、 から急に立ち上がります。
例 2:表面の電荷密度から出す
面電荷密度が の導体表面のすぐ外を調べます。
同じ密度の薄い帯電板なら で、ちょうど半分です。導体では内側に電場が出ないぶん、外側が 2 倍になります。
例 3:空洞のある導体
中空の金属球に を与えます。空洞のなかに電荷を置かなければ、空洞内の電場は 。
内壁にも電荷は現れません。空洞をぐるりと囲むガウス面をとると、囲む電荷が になるためです。 はすべて外壁に出ます。
空洞のなかに を置くと話が変わり、内壁に 、外壁に が現れます。
例 4:不導体を入れる
の電場のなかへ、 の板を入れます。
5 分の 1 に弱まりますが、 にはなりません。導体を入れれば、同じ位置で になります。
例 5:避雷針の先
先端の曲率半径が の針が、 を集めたとします。先端付近を半径 の球で近似します。
空気の絶縁が破れる目安は ほどです。とがった先では、はるかに小さい電荷でもこの値を超えます。
例 6:手を近づける
帯電していない金属板に、正に帯電した棒を近づけます。板の手前側に負の電荷、奥側に正の電荷が現れます。
板全体の電荷は のままです。位置が偏っただけ。棒を遠ざければ元に戻り、この状態を静電誘導と呼びます。
奥側を指で触れてから棒を遠ざけると、正の電荷だけが逃げて板が負に帯電します。触れる順番で結果が変わる。
静電気的につり合った導体の内部について、正しいものはどれですか。
- 電場は弱まるが 0 にはならない
- 電場は 0 で、電荷は表面にだけある
- 電荷は内部に一様に広がっている
並べて見る
| 見るところ | 導体 | 不導体 |
|---|---|---|
| 内部の電場 | 0 | |
| 電荷の居場所 | 表面だけ | 全体に分布したまま |
| 起きること | 自由電子が移動 | 分子が向きをそろえる |
| 外から見ると | 遮蔽する | 弱めるだけ |
分かれ目は、電荷が長い距離を動けるかどうかです。動ければ打ち消しきるまで動き、動けなければ向きをそろえるところで止まる。
同じ「電場を弱める」という現象でも、行き着く先が か、 かで扱いが変わります。導体は を無限大にした極限、と見ておくと 2 つが 1 本につながる。

















自由電子が動いて内部の電場を打ち消し、0 になったところで止まります。内部にガウス面をとると囲む電荷も 0 なので、電荷は表面にしか残れません。弱まるだけで残るのは不導体のほうです。