ヘンリーの法則と気体の溶解度(炭酸飲料の泡と潜水病)
炭酸飲料の栓を開けると泡が立ちます。中身は変わっていない。変わったのは液面の上にある二酸化炭素の圧力です。
一定の温度では、一定量の水に溶ける気体の物質量は、その気体の圧力に比例します。これをヘンリーの法則といいます。
法則が使えるのは、水にあまり溶けない気体に限られます。酸素、窒素、水素、二酸化炭素まで。アンモニアや塩化水素のようによく溶ける気体では、比例からずれます。
体積で測ると一定になる
溶けた気体の量を体積で答えるときに、2 通りの言い方が出てきます。
圧力を 2 倍にすると、溶ける物質量は 2 倍。この量を標準状態の体積に直せば、やはり 2 倍です。
ところが、溶かしたときの圧力のもとで体積を測ると、物質量が 2 倍でも圧力が 2 倍なので、体積は変わりません。
| 物質量で答える | 圧力に比例する |
| 標準状態の体積で答える | 圧力に比例する |
| 溶かした圧力での体積で答える | 圧力によらず一定 |
問題文がどの測り方を指しているかで答えが変わる。「そのときの圧力のもとで」と書いてあれば、3 番目です。
ヘンリー自身が 1803 年の論文でこの形を述べています。同じ温度なら水が吸収する体積はどの圧力でも同じで、それを大気圧のもとに直すと 2 倍、3 倍になる、と書いている[2]。
温度を上げると減る
固体の溶解度は温度を上げると大きくなるものが多いのに対し、気体は逆に小さくなります。
熱運動が激しくなり、水の中から飛び出しやすくなるためです。

、1 気圧での値を並べます。数はヘンリー定数から計算したものです[1]。
| 気体 | 水 1 L に溶ける量 | 標準状態の体積 |
|---|---|---|
| 酸素 | 0.0013 mol | 29.5 mL |
| 窒素 | 0.00065 mol | 14.5 mL |
| 二酸化炭素 | 0.034 mol | 771 mL |
二酸化炭素だけがけたはずれに大きい。水と反応して炭酸になる部分があるためで、酸素や窒素とは事情が違います。
混合気体では分圧で決まる
溶ける量を決めるのは全圧ではなく、その気体の分圧です。空気に接した水なら、酸素の分圧は 0.21 気圧ほど。
の水 1 L に溶ける酸素は、 になります。質量に直すと 8.9 mg。
川や海の魚は、この 1 L あたり 10 mg に満たない酸素で生きています。
栓を開けたとき
炭酸飲料の中では、二酸化炭素の圧力が数気圧に保たれています。栓を開けると液面の上が空気に入れかわり、二酸化炭素の分圧が 0.0004 気圧まで落ちる。
溶けていられる量が一気に小さくなり、あふれた分が泡になります。

深く潜ったときも同じことが起こります。水深 30 m では圧力が 4 気圧ほどになり、呼吸する空気の窒素の分圧も 4 倍。
血液に溶ける窒素が増え、急に浮上すると体の中で泡になります。これが潜水病で、ゆっくり浮上して窒素を逃がす手順がとられる。
で 1 気圧の酸素に接した水 1 L に、酸素は 29.5 mL 溶けます。酸素の圧力を 3 気圧にしたとき、そのときの圧力のもとで測った溶けた酸素の体積はどれですか。
- 88.5 mL
- 29.5 mL
- 9.8 mL
出典
溶けている気体の量は、その気体が液面の上でどれだけの圧力をもっているかで決まります。栓を開けても、深く潜っても、動いているのはこの分圧だけ。













溶ける物質量は 3 倍になります。その気体を 3 気圧のもとで測ると体積は 31 になるため、かけ合わせて 29.5 mL のまま。標準状態に直して答えるときは 88.5 mL です。問題文がどちらの測り方かを先に見ます。