浸透圧とファントホッフの法則で高分子の分子量が測れる
容器を膜で仕切り、片側に水、もう片側に砂糖水を入れます。膜が水だけを通すものであれば、水は砂糖水の側へ移り、液面に差ができる。
この移動を止めるために砂糖水の側へかける圧力が浸透圧です。水だけを通す膜を半透膜といいます。
砂糖の粒は膜ではね返され、水の粒だけが行き来します。左から右へ通る数のほうが多いため、右の液面が上がる。
ファントホッフの法則
浸透圧 は、溶液のモル濃度 と絶対温度 に比例します。
を入れると、気体の状態方程式と同じ形になる。
比例定数の は気体定数そのものです。溶けている粒子が、その体積いっぱいに広がった気体だとしたときの圧力に等しくなる。
浸透圧をはじめて測ったのは植物学者のプフェファーで、1877 年のことでした。1% の砂糖水で 気圧という大きな値が得られています[1]。
ファントホッフはこの測定から上の関係を見つけ、1901 年に第 1 回のノーベル化学賞を受けました。講演では、電解質の溶液だけが例外で、浸透圧が何倍かに大きくなると述べています[1]。
電離すると大きくなる
浸透圧を決めるのは粒子の数で、粒子の種類ではありません。塩化ナトリウムは水中で 2 つのイオンに分かれるため、同じモル濃度でも粒子の数が 2 倍になる。
、 のスクロース水溶液で計算します。
単位は Pa で、0.25 気圧ほど。同じ濃度の塩化ナトリウム水溶液なら、この 2 倍になります。
分子量を測る
浸透圧はうすい溶液でも大きな値になるため、少ししか溶けない物質の分子量を求めるのに向いています。
タンパク質 1.0 g を水にとかして 1.0 L とし、 で浸透圧が だったとします。 から分子量を求める。
同じ溶液の凝固点降下は ほどで、温度計では読めません。浸透圧なら 2.5 cm ほどの液面差として現れます。
体の中と海の中
血液の浸透圧は、含まれる粒子の濃度から決まります。血清 1 kg あたりの粒子は 275 ミリモルから 295 ミリモルの範囲[2]。
で計算すると ほど、つまり 7 気圧ほどになる。赤血球をこれより濃い液に入れると水を失ってしぼみ、うすい液に入れると水が入って破れます。

けがの処置に使う生理食塩水が 0.9% と決まっているのは、この濃さで血液と同じ浸透圧になるためです。
海水はもっと濃い液です。塩分 40.6 g/L の地中海の海水では、 での浸透圧が 29 気圧になります[3]。
逆浸透
海水に浸透圧より大きな圧力をかけると、水は薄いほうへ押し戻されます。塩を残して水だけが膜を通り抜ける、この向きが逆浸透。

海水の淡水化はこの仕組みで動いています。29 気圧を超える圧力がいるため、実際の装置では 60 気圧ほどをかけます。
で のスクロース水溶液と、 の塩化ナトリウム水溶液があります。浸透圧が大きいのはどちらですか。
- スクロース水溶液
- 塩化ナトリウム水溶液
- どちらも同じ
参考
浸透圧の式は気体の状態方程式と同じ形をしています。溶けている粒子の数さえ数えられれば、砂糖でもイオンでもタンパク質でも同じ 1 本の式で扱える。













塩化ナトリウムは水中でナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれ、粒子の数が 2 倍になります。浸透圧は粒子の数で決まるため、こちらが 2 倍。分子量はスクロースのほうがずっと大きいものの、浸透圧には関わりません。