軌道のカオス(リアプノフ時間・精度を上げても伸びない見通し・太陽系の 500 万年)

わずかな違いが、開いていく

同じ 体を 組つくります。片方だけ、初めの位置を 万分の だけずらします。

進めはじめてしばらくは、 つは重なって見えます。どちらがどちらか区別が付きません。

やがて離れはじめます。そして最後には、まるで違う道を行きます。 つが飛び去るのに、もう つは残っている、というところまで違ってきます。

体では、こうはなりません。初めをわずかにずらせば、道もわずかにずれるだけです。 体で起きているのは、ずれ方そのものが違うということです。

開き方には、決まった速さがある

つの開きは、足し算ではなく掛け算で伸びます。決まった時間が経つごとに、倍になっていきます。

縦を 倍ごとの目盛りで取ると、その伸び方がまっすぐな線になります。傾きが、どれだけ速く開くかを表します。

この傾きの逆数をリアプノフ時間といいます。ずれが 倍、つまり 倍ほどに開くまでの時間です。

リアプノフ時間が短いほど、先が見通せません。そして、この時間は系そのものが持つ性質で、測り方をどう工夫しても変わりません。

精度を上げても、見通せる先は伸びない

ここから、厄介な帰結が出てきます。

開きが倍々に増えるということは、逆にたどれば、初めを 倍細かく測っても、見通せる先は 目盛りぶんしか伸びない、ということです。

倍細かくして 目盛り、 倍で 目盛り。桁を積んでも、返ってくるのは足し算ぶんだけです。

測定を 万倍よくするのは大ごとです。それで伸びる見通しが、リアプノフ時間の 倍ぶん。これが、長い先が言えないことの中身です。

太陽系の場合

太陽系のリアプノフ時間は、およそ 万年と見積もられています。 年にラスカーが数値計算から出しました。

いまの惑星の位置は、測れるかぎりの精度で測ってあります。それでも 万年ごとに、ずれが 倍に開いていきます。

億年先では、惑星が軌道のどこにいるかを言い当てる術がありません。地球が太陽の向こう側にいるのか手前にいるのか、そこまで分からなくなります。

軌道そのものは残ります。地球の軌道が 億年後もほぼ同じ大きさの楕円であることは言えます。分からないのは、その楕円のどこにいるかです。

でたらめではない

混同しやすいので、はっきりさせておきます。これはでたらめではありません。

同じところから出せば、何度やっても寸分たがわず同じ道を通ります。式には迷いも揺らぎもなく、次の瞬間の位置は つに決まっています。

決まっているのに、言い当てられない。初めを完全に正確に知ることができないので、遠い先が読めないというだけです。ポアンカレが 年に気づいたのが、まさにここです。

天気の予報が 週間ほどで頭打ちになるのも、同じ理由です。次の章では、この開き方が太陽系で実際に何を起こしているかを見ていきます。