体は解けません。それでも探査機は飛んでいます。どうやって道を決めているのでしょうか。
考え方は単純です。惑星のそばでは惑星だけを、遠くでは太陽だけを相手にする。どちらも 体なので、閉じた式で解けます。
では、どこで切り替えるのか。素朴に考えれば、 つの引きが等しくなるところです。地球と太陽なら、地球から 万 km。月の軌道より内側です。
ところが実際に使う境目は 万 km にあります。決め方が違うからで、引く力そのものではなく、どちらを主役に置いたときに残りの乱れが小さいかで決めています。
この境目を影響圏といいます。大きさは、太陽からの距離に、惑星と太陽の質量の比の 乗を掛けた値です。
。ラプラスが導いた形で、 乗でも 乗でもないところが、この量が単純な力比べではないことを表しています。
地球では 万 km。月の軌道は 万 km ですから、月はちゃんと地球の側に入っています。
木星は重くて遠いので 万 km になり、地球の 倍を超えます。それでも木星の軌道半径の パーセントにも届きません。太陽系のほとんどは、太陽の領分です。
これで手順が決まります。影響圏の外では太陽を中心にした 体、中では惑星を中心にした 体として解きます。
外は楕円か双曲線、中はほぼ必ず双曲線です。惑星に捕まらずに通り抜けるなら、影響圏の中では速さが余っているからです。
地球を出て、太陽の周りを回って、火星の影響圏に入る。この旅は 本の円錐曲線を継ぎ合わせたものになります。これをパッチド・コニックといいます。
体を解かずに済みました。解けない問題を、解ける問題の継ぎ合わせに置き換えたのです。
継ぎ目でやることは つだけです。位置と速度をそのまま持ち越して、中心を渡します。
速度は、太陽から見た値から惑星の速度を引けば、惑星から見た値になります。足し引きするだけで、位置も速度も飛びません。前の章のスイングバイで立場を移したのと、同じ操作です。
ただし、継ぎ目には食い違いが残ります。影響圏の内側でも太陽は引いており、外側でも惑星は引いているのに、継ぎ合わせではその分を落としているからです。
食い違いは小さいものの、 ではありません。このまま飛ばせば、目的地からはずれます。
ずれるのに、なぜ使うのか。速いからです。
継ぎ合わせなら、式を解くだけで道が出ます。どの惑星をどの順に通り、いつ出発し、どこでどれだけ噴かすか。それを何万通りも試して、いちばん安いものを選べます。
決まった大まかな道を初めの値として、そこから先は全部の天体を入れて刻んで進めます。数値で詰めるのは最後だけです。
ボイジャーも、はやぶさも、ジェイムズ・ウェッブも、この 段構えで飛んでいます。解けない問題との、いちばん実際的な折り合いの付け方です。